IPv6(IPv6の概要)
まず、IPv6の概要から解説していきます。
IPv4アドレスは、32ビットで構成されることから、約43億のIPアドレスがあることが分かります。
232 = 4,294,967,296
これは、十分な数のIPアドレスがあるように思えますが、世界中の人口(2022年11月で80億)で考えると、1人に付き1つの IPアドレスすら、割り当てることができないのです。まして、1人で、複数のパソコンやスマートフォンを所持する時代ですから、その各々のデバイスに、IPアドレスを割り当てることもままなりません。
そもそも、IPv4アドレスは、割り当て当初、クラスA、クラスB、クラスCのアドレス単位で、大雑把な割り当てをしていたために、すぐに底を突きそうになりました。
延命措置として、いろいろとIPv4では、さまざまなIPアドレスを節約するための仕組みが考えられたり、使用されていないIPアドレスを回収して再利用しています。
それでも、IPアドレスの枯渇が危惧されるようになったのです。
そこで、このIPアドレス枯渇の問題に対処するために、いくつかの方法が考えられました。
その1つがIPv6です。IPv6は、128ビットで構成されることから、
2128 = 3.4 × 1038 個
正確には
340,282,366,920,938,463,463,374,607,431,768,211,456個
約43億×約43億×約43億×約43億だけのIPアドレス数が確保できます。この数は、事実上、無限のアドレスと言ってよいほど、十分な数のIPアドレス空間です。枯渇の心配は、無用です。
しかし、IPv6にすぐに移行するには、さまざまな障害があります。ネットワーク回線、サービスプログラム、ネットワーク端末が、IPv6に対応しなければならないからです。
今のところ、IPv6に移行するメリットや必要性が高くないため、利用されているとは、言いがたい状況です。
IPv6が広く普及してゆくのかどうかは、まだ、分かりませんが、多くのベンダーがIPv6をサポートしています。IPv4からIPv6への移行は、徐々にでは、ありますが、進んでいることは確かです。
ネットワーク技術者として、IPv4からIPv6への移行に備えて、IPv6を学習しておくことは、重要です。
IPv6のメリット
IPv6のメリットには、次のようなことが挙げられます。
- 128ビットのアドレス空間により、IPアドレスの枯渇の心配が無用
- IPv6を導入すれば、基本的にアドレス変換が不要なり、NAT機能に起因するトラブルが解消します。
- IPアドレスを自動生成することもできるので、煩わしいIPアドレスの設定の手間が削減される。
- ネットワークの構成変更に対し柔軟性がある。アドレス変更に伴う作業を、ユーザに対して透過的に行うことが可能
- IPv6ヘッダは、IPv4ヘッダより簡素化されているため、ルータやスイッチの負荷が少ない。
- IPv4では、ブロードキャストアドレスを使いましたが、IPv6では、マルチキャストを使う。
- 厳密にアドレスが階層化されているので、効率よく集約することができる。
次の「IPv6(IPv4・IPv6ヘッダフォーマット)」では、IPv4とIPv6ヘッダについて解説します。
IPv6(IPv4・IPv6ヘッダフォーマット)
IPv4、IPv6基本フォーマットを図に示します。
IPv4基本ヘッダフォーマット

IPv6基本ヘッダフォーマット

IPv6ヘッダの特徴
IPv4、IPv6基本フォーマットを確認したところで、IPv6の特徴とメリットを説明してゆきます。
●フィールド数が減少
IPv4ヘッダサイズは、20バイト、IPv6ヘッダサイズは、20バイトあります。IPv6ヘッダサイズは、IPv4ヘッダサイズと比べて、20バイト増えていますが、フィールド数は、12個から8個に減っています。これは、中継ルータの負荷が軽減されることを意味します。
●TTLからホップリミットに変更
IPv4へッダの中にはTTL(Time To Live)があります。この値は、ルータを通過するごとに変化する値です。この変化するTTLがあるため、ヘッダチェックサム値は、各ルータにおいて、再計算しなければなりません。これは、ルータにとって、大きな負担となり、遅延をもたらす原因になっています。
IPv4では、TTLフィールドは、残りのルータのホップ数か、残存時間のどちらかを指定するようになっていますが、実際にはホップ数しか使われていません。そこで、IPv6では、ホップリミットという名称に改称し、ホップ数のみに統一しています。
●可変長から固定長へ
IPv4ヘッダには、オプションフィ―ルドがあります。この部分には、暗号化など、さまざまな付加サービスに関する情報が書き込まれます。このため、ヘッダが可変長になるため、ルータにとって、ハードウェア処理が行うことが難しくなっています。これに対して、IPv6ヘッダは、40バイトの固定長となっているため、ルータは処理を高速化することができます。
これらのことから、ルータやスイッチがパケットを転送する際の負荷が減っています。
●フィールド数が減少
IPv4では、IPレイヤでもチェックサムを行っています。昔に比べると、IPよりも下位のレイヤサービスの信頼性は、向上しています。それなのに、TCP/UDPレイヤにおいても、TCP/UDP情報と、宛先IPアドレス、送信先IPアドレス、プロトコル番号、データ長からなる「擬似ヘッダ」を含めてチェックサムを実行しています。
このため、IPv6ではIPレイヤでのヘッダチェックサムを廃止しています。