コリジョンドメイン

コリジョンドメインとは、トラフィックの衝突、渋滞が発生しやすいエリアのこと言います。

 レイヤ1で動作するリピータ (repeater)、ハブ(HUB)は、劣化した信号を整形したり、増幅させ中継する機器であるため、流れてくるトラフィックの流れを制御しません。

 したがって、レイヤ1の機器は、MACアドレスやIPアドレスなどを見てトラフィックを制御するというようなことは行わず、受信したトラフィックを受信したポート以外の全てのポートに対して、無条件でコピーして転送します。

例えば、ハブでは、受信したトラフィックを受信したポート以外の全てのポートに転送します。

 その結果、通信相手が存在しないポートに対してもトラフィックを流してしまうことになります。つまり、必要のないトラフィックを流してしまうことなり、衝突、渋滞が発生しやすくなってしまうのです。

 ネットワーク内のホストの台数が増えると、必然的に衝突(コリジョン)が発生する確率が高くなります。送信するタイミング悪ければ、頻繁に衝突(コリジョン)を引き起こします。

 コリジョンが多発するとネットワークのパフォーマンスが悪くなり、最悪の場合、ネットワークがダウンしてしまいかねません。このコリジョンが発生しやすいネットワークのエリアのことをコリジョンドメインと言います。

リピータ、ハブは、無条件で転送するので、コリジョンドメインを拡張するだけで、分割しません。

 リピータ、ハブでネットワークを拡張する、とさらに、ネットワーク内のホストの台数が増えることになります。必然的に衝突(コリジョン)が発生する確率が高くなります。

コリジョンドメインを分割する

コリジョンの発生を抑え、限られた帯域幅を有効に活用するには、コリジョンドメインを分割する必要があります。

 コリジョンドメインを分割することで、コリジョンドメイン内のホストの台数を減らすことができます。その結果、衝突の確率を下げることができます。

ブリッジやスイッチは、このコリジョンドメインを分割するための装置で、データリンク層で動作します。

 ブリッジ、スイッチでは、送受信するフレームをMACアドレステーブルで管理します。そのため、どのポートにどの機器がつながっているのか理解しています。

 MACアドレス(Media Access Control address)とは、ネットワーク上の各ノードを識別するための番号で、具体的にはNICに書き込まれているハードウェア固有の物理アドレスのことです。

 イーサネットでは、送信するフレーム内に、送信元MACアドレス、宛先MACアドレスを含める仕様になっています。ブリッジや、スイッチは、このMACアドレスを学習することで、宛先ホストにつながるポートにだけにフレームを転送し、不要なフレームを他のポートに流さないことで、ブロードキャストドメインを分割しています。

 ただし、宛先が全てを対象とするブロードキャスト(FF:FF:FF:FF:FF:FF)は、転送します。ブロードキャストを流さないようにするには、ルータが必要になります。

 イーサーネットでは、IPアドレスとMACアドレスの2種類のアドレスを使って通信を行います。どちらのアドレスが欠けても通信できません。IPアドレスは、分かっていたとしても、MACアドレスが分からない場合は、ブロードキャストを使ってMACアドレスを調べます。これをARP要求といいます。

こんな感じです。

PC_A: おーい!PC_DさんMACアドレスを教えて!

ブロードキャストなので、全てのPCに、このメッセージは届きます。

PC_B: 私でないから無視

PC_C: 私でないから無視

PC_D: 私だから返事をしなきゃ!

 ブリッジ、スイッチでは、宛先が全てを対象とするブロードキャスト(FF:FF:FF:FF:FF:FF)を転送してしまいます。このブロードキャストは、コリジョンドメイン内の端末が多くなればなるほど増加します。

 ブロードキャストが厄介なのは、本人以外の端末にも届いてしまい、それらの端末が自分宛てかどうかを判断しなければならないことです。ブロードキャストの数が多いと負担が大きくなってしまいます。

このブロードキャストを流さないようにするには、ルータが必要になります。

ブロードキャストドメイン

 ブリッジ、スイッチは、送受信するフレームをMACアドレステーブルで管理することで、コリジョンドメインを分割することができます。

 ブリッジや、スイッチでは、このMACアドレスを学習することで、宛先ホストにつながるポートにだけにフレームを転送し、不要なフレームを他のポートに流さないことで、ブロードキャストドメインを分割しています。

しかし、宛先が全てを対象とするブロードキャスト(FF:FF:FF:FF:FF:FF)は、転送してしまいます。

 このように、ブロードキャスト(FF:FF:FF:FF:FF:FF)が届く範囲をブロードキャストドメインと言います。ARP要求などのブロードキャストは、ブロードキャストドメイン全体に流れてしまうことになるのです。

スイッチやブリッジは、コリジョンドメインを分割しても、ブロードキャストドメインは分割しないのです。

ブロードキャストを流さないようにするには、ルータが必要になります。

 ルータは、ブロードキャストを転送しません。ブロードキャストが届かないということは、ARP要求もルータによってブロックされることになります。つまり、ルータの向こう側の端末のMACアドレスを調べることができず、イーサネットフレームを作れなくなってしまいます。

 そこで、ルータの向こう側の端末と通信する場合には、所属するブロードキャストドメイン内のルータのインターフェイスのMACアドレスを宛先MACアドレスとして指定し、ルータにフレームを送ります。

 このルータのインターフェイスのことをデフォルトゲートウェイと呼びます。デフォルトゲートウェイは、異なるネットワーク間の出入り口になります。

DHCP、仮想LAN(VLAN)については、後ほどのコンテンツで紹介しますが、ここで、少し補足しておきます。

 ルータによってブロードキャストがブロックされるということは、DHCP要求もブロックされてしまうことになります。DHCP要求のブロードキャストをブロックしないようにするには、ルータにDHCPリレーの設定をするか、ブロードキャストドメインごとにDHCPリレーエージェントを設置する必要があります。

 ここでは、ルータが、ブロードキャストドメインを分割する装置だと説明してきましたが、レイヤ2のスイッチでも、仮想LAN(Virtual LAN)を使用することで、ブロードキャストドメインを分割することができます。