IGRPの特徴

 IGRP とは、Interior Gateway Routing Protocol の略で、シスコ独自のルーティングプロトコルです。RIP とともに、古くから利用されています。

 RIP の最大ホップ数は、15であるため、小規模なネットワークでしか活用できませんが、IGRP では、最大ホップ数は、255に拡張されています。

メトリック

 IGRP は、RIP と同様に、ディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルです。ルーティングテーブルを90秒ごとに交換しています。RIP では、メトリックはホップカウントのみでしたが、IGRP では、「帯域幅」「遅延」「負荷」「信頼性」「MTU」の5つを使います。

メトリックの計算式は、以下になります。

メトリック=[K1×帯域幅 + (K2 × 帯域幅) ÷ (256 – 負荷) + (K3 × 遅延)] × [K5 ÷ (信頼度 + K4)]

係数であるK1~K5のデフォルト値は

K1=1,K2=0,K3=1,K4=0,K5=0

になっているので

メトリック = 帯域幅 + 遅延

になります。

K4=0,K5=0の場合、[K5 ÷ (信頼度 + K4)]は、計算されないようになっています。

つまり、IGRP は、デフォルトで回線の帯域幅を見ます。この辺が RIPとの大きな違いになります。

 下の図の場合、Router_A から Router_E までの経路は、RIP を使ったの場合と IGRP 使った場合でどんな違いがあるのか。どういう経路を選択するか考えてみます。

 RIP は、メトリックとしてホップカウントしか見ません。Router_A からRouter_E までの経路は、ホップカウント数だけで考えると、下図のように上のルート経由した方が、ホップカウント数が少なくなります。

と言うことで、RIP は、回線の帯域幅が64Kbpsと狭くとも、下の赤線のように上のルートを選択してしますのです。

RIP による選択経路は、以下のようになります。

Router_A → Router_B → Router_D

ホップカウント数だけでは、必ずしもベストパスならないということです。

 IGRP では、メトリックとしてデフォルトで、「帯域幅+遅延」を考慮して経路を考えます。Router_A から Router_E までの経路は、下図のように回線のスピードが速い下の経路が選択されます。

IGRPによる選択経路は、以下のようになります。

Router_A → Router_C → Router_D → Router_E

経由するルータの数は、多くなりますが、RIPと比べるとよりベターなルートが選出されることになります。

IGRPのルーティングタイマ

項目デフォルト値
アップデートタイマ90秒ごと
無効タイマ270秒
ホールドダウンタイマ280秒
フラッシュタイマ630秒

タイマについて少し、おさらいをしておきます。

●アップデートタイマ

定期アップデートの間隔です。この間隔時間でルーティングアップデートを送信します。

●無効タイマ

 隣接ルータから最後のアップデートを受信してから、経路がダウンしたと判断する時間。ルーティングアップデートを受信してその経路情報が含まれている場合、タイマ値は、0にリセットされます。アップデートタイマの3倍の値になります。

●ホールドダウンタイマ

 ダウンしている経路を復活させないためのタイマです。ディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルは、ルーティング・ループを回避するために一定時間、待機します。定期アップデートを無効タイマ内に受信できなかった場合、その経路が到達不能になったと判断してホールドダウンタイマを起動させます。アップデートタイマの3倍の値に10を加えた値になります。

 ホールドダウンタイマ期間内では、アップデートを受信した、同じ近接ルータから再びアクセス可能だと知らされた場合と、以前よりよいルートが発見された場合、ホールドダウンタイマ値を 0にリセットします。

●フラッシュタイマ

ルーティングテーブルから経路情報を削除するまでの時間。アップデートタイマの7倍の値になります。

IGRP のタイマ値を図で表すと下の図のようになります。

 RIP の場合、フラッシュタイマは、ホールドダウンタイマの途中で期限に到達してしまうので、ホールドダウンタイマの上限に達する前に経路情報は、破棄されるので注意して下さい。

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