ヘッダ圧縮

ヘッダ圧縮

 HTTP/2は、前のバージョンであるHTTP/1.xに比べて、より高速で効率的なウェブの通信を実現するために設計されました。その中でも、ヘッダ圧縮はHTTP/2の特徴の一つであり、データ転送量を削減して通信速度を向上させます。

 ヘッダ圧縮は、HTTP/1.xのように、リクエストやレスポンスで送信されるヘッダ情報をそのまま送信するのではなく、より小さなサイズで転送するために使用されます。HTTP/2では、ヘッダ圧縮アルゴリズムとしてHPACKが使用されています。

 HPACKは、ヘッダ情報を静的テーブルと動的テーブルに分けて、インデックス番号で参照することで効率的に転送できるようにします。静的テーブルには、HTTP/1.xのヘッダフィールドでよく使用されるものが事前に定義されており、動的テーブルには、リクエストやレスポンスで使用されるカスタムヘッダが格納されます。

 具体的には、クライアントがサーバにリクエストを送信する際、リクエストヘッダ情報は圧縮されてサーバに送信されます。サーバは、受信した圧縮されたリクエストヘッダ情報をデコードし、レスポンスを返す際に同様に圧縮されたレスポンスヘッダ情報をクライアントに送信します。これにより、通信量が削減され、通信速度が向上します。

 ただし、ヘッダ圧縮はCPU処理のオーバーヘッドがあるため、低速なデバイスや通信回線では、通信速度が低下する場合があります。また、ヘッダ圧縮によって、ヘッダ情報が暗号化されるため、デバッグやトラブルシューティングが困難になるという問題もあります。

 さらに、HPACKは、ヘッダ情報を圧縮するための2つの方法を提供しています。一つは、インデックス番号を使用して既存のヘッダ情報を参照する方法であり、もう一つは、リテラル値を送信する方法です。

 インデックス番号を使用する方法では、静的テーブルと動的テーブルの中から対応するヘッダ情報のインデックス番号を送信します。これにより、ヘッダ情報を再利用することができ、データの転送量が減少します。また、静的テーブルによって、サーバが事前に定義したヘッダ情報を効率的に送信できます。

 リテラル値を送信する方法では、静的テーブルや動的テーブルに含まれないカスタムヘッダ情報を送信することができます。ただし、この方法はデータ転送量が多くなってしまうため、効率的に圧縮できない場合に限定的に使用されます。

 また、HPACKは、ヘッダ情報を最適化するための動的テーブルのサイズ制限を設けています。これにより、不必要なヘッダ情報が動的テーブルに格納されないようにして、圧縮の効率を向上させることができます。

 以上が、HTTP/2のヘッダ圧縮についての詳細な説明です。ヘッダ圧縮によって通信量を削減し、通信速度を向上させることができますが、低速なデバイスや通信回線では、ヘッダ圧縮が逆効果になる場合があるため、注意が必要です。

 また、ヘッダ圧縮によって、セキュリティ上のリスクが生じる可能性があります。圧縮されたヘッダ情報に対して、攻撃者が特定の値を注入することで、サーバー側で脆弱性が発生する可能性があります。このような攻撃を避けるために、HPACKでは、ストリーム単位での圧縮を行い、各ストリームに対して固有のヘッダテーブルを使用することが推奨されています。

 また、HTTP/2では、1つのコネクションに複数のストリームを乗せることができるため、複数のストリームが同時に圧縮を行う場合、圧縮されたヘッダ情報の順序が変わる可能性があります。これによって、ヘッダ情報が正しく解析されない場合があるため、注意が必要です。

 総じて、HTTP/2のヘッダ圧縮は、効率的な通信の実現に不可欠な技術の一つですが、セキュリティや正しい解析の観点から、実装にあたっては慎重な取り扱いが必要です。