NATの概要

 インターネットが急成長してくると、IPv4アドレスが枯渇する問題が浮かび上がってきました。このIPアドレスの不足を対処するために、いくつかの解決策が開発されました。その1つの解決策が、NAT(Network Address Translation)です。

 NAT を使用すると構内でのみ使用できるプライベートIPv4 アドレスを、インターネットで使用できるグローバルIPアドレスに変換できます。そうすることによって、プライベートIP アドレスが割り当てられた端末が、透過的にインターネットにアクセスできるようになります。

 NATがなければ、プライベートIPアドレスが割り当てられた端末は、インターネットにアクセスすることはできません。

 IPv4 アドレスで、端末の台数分のグローバルIPv4 アドレスを取得するのは、困難です。NATを使うことにより、個々の企業、自宅において、プライベートIPv4 アドレスを端末に割り当て、取得したグローバルIPv4 アドレスに変換することで、インターネットへ接続を提供することができます。

NATには、次の3つの方式があります。

  • スタティックNAT
  • ダイナミックNAT
  • PAT(オーバーローディング)

 プライベートIPv4アドレスとグローバルIPv4アドレスの対応が常に1対1になる「スタティックNAT」、用意したグローバルIPv4アドレスのプールのなかで、プライベートIPv4アドレスとグローバルIPv4アドレスと1対1に対応させる「ダイナミックNAT」、TCP/UDPのポートを管理することで1つのグローバルIPv4アドレスでローカルIPv4アドレスが設定された複数の端末を同時に通信できるようにする「PAT」があります。

 最近では、このNAT機能は、安価なブロードバンドルータでもサポートしています。もちろん、Ciscoルータでも使えます。

 Ciscoルータを設定する際に、下の表のNATの用語を知っておく必要があります。「内部」、「外部」、「ローカル」、「グローバル」と呼び方が独特です。紛らわしくて覚えにくいと思いますが、この呼び方と違いを理解しておく必要があります。

種類意味
内部ローカルアドレスLAN内で使用しているプライベートIPv4アドレス
内部グローバルアドレスアウトサイドで使用するIPアドレス。通常は、ISPから取得したグローバルIPv4アドレス。
外部ローカルアドレスLAN内で宛先としている外部へのIPv4アドレス
外部グローバルアドレス通信相手が取得しているグローバルIPv4アドレス。通常は、外部グローバルアドレスと外部ローカルアドレスは、同じ。

NAT変換は、内部ローカルアドレスと外部ローカルアドレスの変換が、基本になります。

ローカル  ・・・ LAN
グローバル ・・・ インターネット

内部 ・・・ 送信元
外部 ・・・ 宛先

と当てはめて、考えると理解しやすいかもしれません。

次の「NATの種類」では、NAT変換の3つの方法について解説します。

関連コンテンツ