プロトコルは同じ階層で処理する

プロトコルは同じ階層で処理する

 通信プロトコルは、同じ階層で処理することが原則となっています。この原則は、OSI参照モデルやTCP/IPモデルなどのネットワークモデルで表現されます。

 例えば、OSI参照モデルでは、ネットワークに関する機能を7つの階層に分類し、それぞれの階層が異なる機能を担当します。通信プロトコルは、同じ階層のプロトコル同士で通信を行います。

 具体的には、下位の階層である物理層では、信号を伝送するための物理的な仕組みを定めます。例えば、イーサネットプロトコルでは、物理層で電気信号を送受信するための標準規格を定めています。

 一方で、上位の階層であるアプリケーション層では、アプリケーションソフトウェア間での通信を行うためのプロトコルを定めます。例えば、HTTPプロトコルは、アプリケーション層でWebサーバーとWebブラウザー間の通信を行うためのプロトコルです。

 階層ごとにプロトコルが分かれていることで、システムの拡張や交換が容易になり、プロトコルの改善や開発も容易になります。また、各階層での機能の明確化によって、システム全体の設計やトラブルシューティングがしやすくなります。

 同じ階層で処理することによって、下位の階層は上位の階層から隠蔽されます。つまり、上位の階層から下位の階層の実装の詳細を知らずに、上位の階層のプロトコルを利用することができます。例えば、WebブラウザーがHTTPプロトコルを使用してWebサーバーと通信を行う際に、HTTPプロトコルがTCPプロトコルを使用してデータを転送していることを意識する必要はありません。

 このように、階層構造と同じ階層で処理することで、各階層のプロトコルはそれぞれの役割に従って設計され、実装されます。また、上位の階層が下位の階層に対して命令を発行することもなく、各階層は自律的に動作するため、システム全体の安定性や信頼性が向上します。

 しかし、階層構造によって、同じデータを複数回処理することになるため、通信の効率が低下するという欠点もあります。また、階層間のインタフェースにおいて、プロトコルが異なるためにデータの変換が必要となる場合があるため、処理のオーバーヘッドが増加することもあります。

 さらに、同じ階層で処理することによって、異なるプロトコルを組み合わせることが可能になります。例えば、TCP/IPプロトコルスタックは、TCPとIPのプロトコルを組み合わせて構成されています。また、HTTPプロトコルはTCPプロトコルの上位に位置するため、TCPプロトコルを使用してHTTP通信を行うことができます。これらのプロトコルは、それぞれの役割に従って設計され、実装されることで、システム全体の機能性と拡張性が向上します。

 同じ階層で処理することによって、プロトコルがより柔軟になります。新しいプロトコルを追加することができ、既存のプロトコルを変更することなく、システム全体の動作を向上させることができます。また、異なるプロトコルを組み合わせることによって、システム全体の機能性を拡張することができます。

 ただし、プロトコルが階層構造で設計されているため、各階層の実装は、その階層のプロトコルに従って設計される必要があります。そのため、プロトコルに不適切な変更を加えることで、システム全体の動作を損なう可能性があることに注意する必要があります。