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 ネットワークの構成を Packet Tracer で一から設定していくのは大変かと思います。「ダウンロード」から演習で使用するファイルのダウンロードができます。ファイルは、McAfee インターネットセキュリティでウイルスチェックをしておりますが、ダウンロードは自己責任でお願いいたします。

演習ファイルのダウンロード

OSPF(デフォルトルートの伝播)

 デフォルトルートの設定は、ルーティングプロトコルの種類、IOSのバージョンによって、ルータの動作が異なるため、注意が必要です。ここでは、OSPF によるデフォルトルートの伝搬について解説していきます。

下図のネットワークを使用します。

 インターネット網をシミュレートするために、ISPルータにループバックアドレス、Lo0~lo3 を設定します。このループバックアドレスを仮のインターネット宛てのIPアドレスとして代用します。

 上図のネットワークの構成では、インターネット宛へのルートは膨大です。そのルートを、各々のルータで扱うのは大変な作業となります。そこで、R1ルータ、R2ルータにおいて、宛先ネットワークがインターネット向けのルートをデフォルトルートを設定することでルータのルーティングテーブルの小さくすることができます。

 そのデフォルトルートですが、R1ルータ、R2ルータにおいて静的なデフォルトルート「ip route 0.0.0.0 0.0.0.0」を指定することでもできますし、インターネットへの境界ルータであるR1ルータAで指定したデフォルトルートを他のRIPルータに伝播させることもできます。

 ここでは、「ip route 0.0.0.0 0.0.0.0」で指定したデフォルトルートを「default-information originate」コマンドを使用して、OSPF でエリア内の隣接ルータへデフォルトルートを伝搬させていきます。

基本設定

まず、ホスト名とIPv4アドレスなどの基本設定をルータに行います。

各ルータの基本コンフィグは、以下のとおりです。

●ISPのコンフィグ
hostname ISP
int lo0
ip address 10.0.0.1 255.255.255.0
int lo1
ip address 20.0.0.1 255.255.255.0
int lo2
ip address 30.0.0.1 255.255.255.0
int lo3
ip address 40.0.0.1 255.255.255.0
int s0/0/0
ip address 200.0.0.1 255.255.255.0
clock rate 64000
bandwidth 64
no shutdown
exit
ip route 172.16.0.0 255.255.255.0 200.0.0.2
ip route 172.17.0.0 255.255.255.0 200.0.0.2
end
copy run start

●R1のコンフィグ
hostname R1
int s0/0/0
ip address 200.0.0.2 255.255.255.0
bandwidth 64
no shutdown
int s0/0/1
ip address 172.16.0.1 255.255.255.0
clock rate 64000
bandwidth 64
no shutdown
exit
router ospf 1
network 172.16.0.0 0.0.0.255 area 0
end
copy run start

●R2のコンフィグ
hostname R2
int g0/0
ip address 172.17.0.1 255.255.255.0
no shutdown
int s0/0/0
ip address 172.16.0.2 255.255.255.0
bandwidth 64
no shutdown
exit
router ospf 1
network 172.16.0.0 0.0.0.255 area 0
network 172.17.0.0 0.0.0.255 area 0
end
copy run start

OSPFにおけるデフォルトルートの伝播設定

default-information originate コマンド

 LSAタイプ5で、他のOSPF ルータへデフォルトルートをアドバタイズします。ただし、ルーティングテーブルにデフォルトルートが存在していることが条件となります。

「default-information originate」コマンドは、ルーティングコンフィグレーションモードで設定します。

Router(config)#router ospf {プロセス番号}
Router(config-router)#default-information originate { always } [ metric metric値 } { metric-type [ 1 | 2 ] }

コマンド引数説明
alwaysルータ自身にデフォルトルートの定義がなくても、デフォルトルートを自動で生成する。
metricデフォルトルートのメトリック値を指定する。※デフォルト値:1
metric-typeデフォルトルートのメトリックタイプの指定 ※デフォルト値:タイプ 2

各ルータの追加設定

それでは、各ルータに設定を追加していきます。

ここでは、シンプルにコマンド引数の指定をしないで、設定を行っていきます。

●R1ルータにて

R1(config)#ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 200.0.0.1
R1(config)#router ospf 1
R1(config-router)#default-information originate

●R2ルータにて

R2ルータでは、デフォルトルートの設定は必要ありません。R1ルータから伝播してきます。

ルーティングテーブルの確認

R1ルータ、R2ルータのルーティングテーブルを確認します。

 実機の場合は、「default-information originate」コマンドにより変更が、すぐに反映されるのですが、Packet Tracer 8.1.1 の場合、状況によっては、反映されない場合もあるようです。

・念のため「Power Cycle Devices」ボタンをクリックして、すべてのデバイスを再起動させておきます。

●R1の「show ip route」の出力

R1#show ip route
Codes: L - local, C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP
       D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
       N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
       E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
       i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
       * - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
       P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is 200.0.0.1 to network 0.0.0.0

     172.16.0.0/16 is variably subnetted, 2 subnets, 2 masks
C       172.16.0.0/24 is directly connected, Serial0/0/1
L       172.16.0.1/32 is directly connected, Serial0/0/1
     172.17.0.0/24 is subnetted, 1 subnets
O       172.17.0.0/24 [110/1563] via 172.16.0.2, 00:00:25, Serial0/0/1
     200.0.0.0/24 is variably subnetted, 2 subnets, 2 masks
C       200.0.0.0/24 is directly connected, Serial0/0/0
L       200.0.0.2/32 is directly connected, Serial0/0/0
S*   0.0.0.0/0 [1/0] via 200.0.0.1

「S*」は、デフォルトルートを表しています。

●R2の「show ip router」の出力

R2#show ip route
Codes: L - local, C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP
       D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
       N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
       E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
       i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
       * - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
       P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is 172.16.0.1 to network 0.0.0.0

     172.16.0.0/16 is variably subnetted, 2 subnets, 2 masks
C       172.16.0.0/24 is directly connected, Serial0/0/0
L       172.16.0.2/32 is directly connected, Serial0/0/0
     172.17.0.0/16 is variably subnetted, 2 subnets, 2 masks
C       172.17.0.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/0
L       172.17.0.1/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
O*E2 0.0.0.0/0 [110/1] via 172.16.0.1, 00:30:50, Serial0/0/0

これは、「EX」は、OSPFが外部から学習したエントリーであるとこを意味します。

OSPF によってR1ルータからデフォルトルートが伝播されてきたことが確認できます。

疎通確認

●PC1から、インターネット網へPingを行います。

PC1のコマンドプロンプトを表示します。

C:>ping 10.0.0.1

 ここまで、RIP、IGRP、EIGRP、OSPFとデフォルトルートの伝播の設定を紹介してきましたが、デフォルトルートの設定は、ルーティングプロトコル、IOSのバージョンによって、様々な設定方法があります。いろいろ試してみるとよいでしょう。

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