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デフォルトルート利用場面③

 「デフォルトルート利用場面①」と「デフォルトルート利用場面②」で設定したスタティックルートの一部をデフォルトルートに置き換えていきます。

デフォルトルートとは

 デフォルトルートは、ルータのルーティングテーブルにおいて、パケットが宛先のIPアドレスに対応するルート(経路)が見つからない場合に使用される特定のルートを指します。つまり、特定の宛先に対する明示的な経路情報がない場合に、どのようにしてパケットを送信するかを示す設定です。

 通常、デフォルトルートはインターネットに接続されたルータやネットワークデバイスに設定されます。これにより、ネットワーク上の特定の宛先に関する情報がない場合でも、そのパケットはデフォルトルートに従って送信されます。例えば、特定の宛先IPアドレスに対するエントリがルーティングテーブルにない場合、そのパケットはデフォルトルートに基づいて次の経路に送られます。

 ルーティングテーブルが大規模になると、特定の宛先ごとに経路を設定することは複雑になります。デフォルトルートを使用することで、ルーティングテーブルを簡素化し、効率的に管理できます。これにより、ルーターやネットワークデバイスの処理負荷が軽減されます。

 インターネット上には100万近くのルートが存在しています。そのすべてのルートをルーティングテーブルに登録するには無理があります。仮に登録できたとしても、膨大なルーティングテーブルから、宛先の経路を探し出す作業がルータにとって、かなり負荷がかかることになります。CPUやメモリ資源も必要になってきます。また、インターネット上のルートは絶えず変化しているため、ルーティングテーブルを維持することも困難です。

そこで、利用されるのがデフォルトルートです。デフォルトルートは次の構文で定義します。

Router(config)#ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 {ネクストホップ | 出口インターフェイス}

 デフォルトルートを利用する箇所として、インターネットへ接続する境界ルータが挙げられます。インターネットには膨大な経路があるからです。また、境界ルータ以外でも、デフォルトルートを定義することでルーティングテーブルをシンプルにできます。

R1ルータの設定

 R1ルータにとって赤破線の「200.200.200.0/30」「10.0.0.0/8」「20.0.0.0/8」「30.0.0.0/8」は、すべて右側のネットワークです。

R1ルータのルーティングテーブルを確認します。

R1#show ip route
Codes: L - local, C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP
       D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
       N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
       E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
       i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
       * - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
       P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is not set

S    10.0.0.0/8 [1/0] via 172.16.2.2
S    20.0.0.0/8 [1/0] via 172.16.2.2
S    30.0.0.0/8 [1/0] via 172.16.2.2
     172.16.0.0/16 is variably subnetted, 4 subnets, 2 masks
C       172.16.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/0
L       172.16.1.1/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
C       172.16.2.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/1
L       172.16.2.1/32 is directly connected, GigabitEthernet0/1
     200.200.200.0/30 is subnetted, 1 subnets
S       200.200.200.0/30 [1/0] via 172.16.2.2

 スタティックルートが4つあります。この4つのスタティックルートをデフォルトルートに置き換えます。4つのスタティックルートを削除して、デフォルトルートを追加します。

以下のコマンドを実行します。

R1#conf t
R1(config)#no ip route 200.200.200.0 255.255.255.252 172.16.2.2
R1(config)#no ip route 10.0.0.0 255.0.0.0 172.16.2.2
R1(config)#no ip route 20.0.0.0 255.0.0.0 172.16.2.2
R1(config)#no ip route 30.0.0.0 255.0.0.0 172.16.2.2

R1(config)#ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 172.16.2.2
R1(config)#end
R1#copy run start

R1ルータのルーティングテーブルを再度確認します。

R1#show ip route
Codes: L - local, C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP
       D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area
       N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2
       E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2, E - EGP
       i - IS-IS, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2, ia - IS-IS inter area
       * - candidate default, U - per-user static route, o - ODR
       P - periodic downloaded static route

Gateway of last resort is 172.16.2.2 to network 0.0.0.0

     172.16.0.0/16 is variably subnetted, 4 subnets, 2 masks
C       172.16.1.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/0
L       172.16.1.1/32 is directly connected, GigabitEthernet0/0
C       172.16.2.0/24 is directly connected, GigabitEthernet0/1
L       172.16.2.1/32 is directly connected, GigabitEthernet0/1
S*   0.0.0.0/0 [1/0] via 172.16.2.2

 スタティックルートがデフォルトルート「0.0.0.0/0」のみとなり、ルーティングテーブルがシンプルになりました。「S*」の凡例は、そのルートがデフォルトルートであることを意味しています。

 そして、「Gateway of last resort is 172.16.2.2 to network 0.0.0.0」と表示されるようになります。これは、デフォルトルートが設定されているということを意味しています。

動作確認

PC1の「Web Browser」を起動します。

URLに「www.yahoo.co.jp」と入力します。


4つのスタティックルートをデフォルトルートに置き換えても、Internetに対して通信できることが確認できます。

 次の「デフォルトルート利用場面④」でR2ルータとISPルータのスタティックルートの一部をデフォルトルートに置き換えていきます。

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