VRRPとは
デフォルトゲートウェイを失うと、そのデフォルトゲートウェイに接続しているセグメント上の機器は通信できなくなってしまいます。
このような障害を回避するために次のような対策があります。
- ダイナミックルーティングで迂回する方法
- VRRPを使う方法
ここでは、VRRPを使ってルータを冗長する方法を紹介します。
VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)は、仮想ルータ冗長プロトコルとも呼ばれています。同一サブネット内のデフォルトゲートウェイを可用生を高め冗長化することができます。RFC3768で定義され、ルータやレイヤ3スイッチなどでサポートされています。
VRRPは、テクニカルエンジニア ネットワーク試験の午後でも度々、取り上げられている重要なプロトコルの一つです。その動作の仕組みについて理解しておきましょう。理解をより深めるために実際にVRRPネットワークを実際に構築してみましょう。
まず、VRRPを使用しない場合について考えてみましょう。
下の図のようにRouterAに障害が発生した場合、セグメントAに所属するPCは、この障害を回避できません。

今度は、ルータBを増設して、下の図のようにネットワークを構成し直したとします。しかし、VRRPを使用しない場合、セグメントAに所属するPCのデフォルトゲートウェイをRouterBに、セグメントBに所属するPCのデフォルトゲートウェイをRouterBに変更しなければなりません。
たとえ、DHCPでTCP/IPの設定を払い出しをしていたとしてもDHCPサーバの払い出しの変更が必要になります。このままでは、自動的にデフォルトゲートウェイを変更することができません。

ここで、2台のルータに同じIPアドレスを割り当てれば、うまくゆきそうな、感じもしますが、それは、「重複するIPアドレスが存在してはならない」というネットワークの掟を破ってしまうことになり、IPアドレスの競合が発生してしまいます。
ところが、VRRPを使用した場合はどうでしょうか。
VRRPを使ってルータを冗長化させた場合は、クライアントのデフォルトゲートウェイの設定を変更しなくても、自動的にRouterBを経由して通信が可能になります。
その仕組みですが、VRRPでは、下の図のように複数のルータが1つのグループを構成し、仮想のIPアドレスとMACアドレスを持つ仮想ルータを作ります。仮想ルータは2台以上の物理ルータから構成されます。

VRRPが動作している複数のルータのうち、通常、1台のルータがマスターになります。このルータをマスタールータと呼びます。このマスタールータが仮想ルータのIPアドレス、MACアドレス(マスタルータが代理でARP応答で答える)を利用して通信を行ないます。他のルータはバックアップとして動作し、マスタールータ異常時に備えて待機しています。この、ルータをバックアップルータと呼びます。
マスタールータがダウンした場合、バックアップルータが速やかに、仮想IPアドレス、仮想MAC アドレスを引き継いで仮想ルータを存続させ動作させます。
ホストの設定は、物理ルータのIPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定するのではなく、仮想ルータのIPアドレスをデフォルトゲートウェイとして設定します。上の図では、仮想IPアドレスZを指定します。そうすることによって、マスタールータがダウンしてもバックアップルータを経由することで通信を継続させることができます。
VRRPの仕組みが理解できたところで、早速、VRRPを使用したネットワークを構築してみましょう。
続きは、こちら「VRRPを設定する(その1)」で紹介しています。