AS(自律システム)とは

 インターネットは、広大で、非常に多くのネットワークが含まれています。世界中の宛先にデータを届けるためには、インターネット上の全てのネットワークの経路情報を管理する必要があります。

 規模が小さいネットワークであれば、単一組織で経路情報を一元管理することもできますが、インターネットという規模ともなれば、それは不可能です。

 大きなネットワークは、小さく分割して管理した方が、管理がしやすく、現実的です。そこで、考えられたのが、自律システム(Autonomous Systems)です。自律システムのことをASとも呼びます。

 ASとは、大きなネットワークを小さなネットワークに分割したもののことで、インターネットは、このASが相互に接続されて構成されています。

ASは、単一の管理下にあるネットワークのことで、各ASは、異なる組織や企業によって管理されています。

 基本的に、1つのAS内で、同じ内部ルーティングポリシーで管理されており、一意のAS番号によって識別されています。このAS番号は、インターネット上で管理され、登録される番号で、IANAにより、IPアドレスと共に割り当てられています。

AS番号の割り当て

 インターネットを分割して、小さくしたものがASです。このAS管理するために番号が割り当てられています。この番号のことをAS番号(ASN: AS Number)言います。

 この番号が、重複されインターネット上に複数あった場合、どうでしょうか。ASを識別することが困難になりますよね。

そこで、AS番号は、IANAにより、割り当てられ、IPアドレスと共に管理されるようになっています。

 AS番号は、ブロック単位で、地域のインターネットレジストリ(RIR)に割り当てられます。AS番号を取得するには、その地域を管轄しているRIRもしくは、国別インターネットレジストリで所定の手続きを行って、番号を取得するようになっています。

 ASの最も一般的な例はISPで、ほとんどの企業や個人は、ISPを通じてインターネットに接続しています。ISPは、自身のネットワークルートをだけでなく、接続している全ての企業や顧客ネットワークへのルートを管理しています。

範囲名称適用箇所
1~64,511グローバルAS番号インターネット上で使用する。
64,512~65,535プライベートAS番号組織の内部でのみ使用する。

 AS番号は、IGRP、EIGRP、BGPなどのルーティングプロトコルを行うのに使用されています。特にBGPにおいては、インターネット上のルーティングを行うための主要ルーティングプロトコルとなっており、ユニークなAS番号が必要です。

 AS内部で使用するAS番号は、プライベートAS番号を使う必要がありますが、ASが、インターネットの一部になっておらず、組織内部で閉じているのであれば、プライベートAS番号を気にせず、自由にAS番号を使用することができます。

 上記で説明したように、AS番号は、16ビット(2バイト)の整数の番号であるため、現在のように世界中を張り巡らされたインターネットのような巨大ネットワークでは、人口の増加、需要の増加のため、近い将来、枯渇の恐れがあります。

 そこで、AS番号は、32ビット(4バイト)オクテット(32ビット)に拡張されています。ただし、全てのネットワークが4オクテットのAS番号に対応しているわけではありません。そのため、32ビットのAS番号に未対応のルータとも通信が行えるような仕組みが用意されています。

AS番号を指定するルーティングプロトコル

 動的にルーティングテーブルの維持と管理を行うルーティングプロトコルには、複数の種類があります。大きく分けると次の2種類に分類することができます。

  • 自律システム間のルーティング用
  • 自律システム内ルーティング用

 自律システムとは、別名、AS(Autonomous System)と言い、1つの管理ポリシーで制御されるネットワークの集合体のことです。

※複数の管理ポリシーで制御される場合もあります。

 自律システムはISPやプロバイダなどにIANAにより一意な番号が割り振られ、管理されています。LAN内で使用する場合は、管理者が任意に割り当てて使用することができます。

インターネットは、この自律システムが複数集まって形成しています。

ルーティングプロトコルの種類

 自律システム間のルーティングを行うプロトコルをEGP(Exterior Gateway Protocol)と呼び、自律システム内のルーティングを行うプロトコルはIGP(Interior Gateway Protocol)と呼びます。

EGP、IGPには、以下のような種類が存在します。

●EGP(エクステリア ゲートウェイ プロトコル)
 ・EGP (Exterior Gateway Protocol)
  ※種別と同名で紛らわしい。
 ・BGP (Border Gateway Protocol)

 BGPは、様々なパス属性があり、複雑なポリシーを基にルートを決定します。

●IGP(インテリア ゲートウェイ プロトコル)

  • RIP (Routing Information Protocol)
  • OSPF (Open Shortest Path First)
  • IS-IS (Intermediate Sysytem to Intermediate Sysytem)
  • IGRP (Interior Gateway Routing Protocol)
  • EIGRP (Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)

ASとルーティングプロトコルとの関係

AS番号を指定するルーティングプロトコルには、IGPでは、IGRPとEIGRPがあり、EGPでは、BGPがあります。

 IGPであるIGRPとEIGRPのAS番号を指定したルーティングの設定は、とても簡単です。ルータが所属するAS番号を指定するだけです。

 一方、EGPのBGPは、異なる自律システムの間でルーティング情報を交換するため設定は、複雑です。設定を行う前に十分に設計を行う必要があるからです。

 なぜなら、各ASは、異なる組織によって管理されるため、ASごとに異なるインテリア プロトコルを使用している可能性があるからです。

 そのため、BGPは、様々なAS間でコミュニケーションを取ることがことができなければなりません。そこで、BGPでは、外部のルーティング情報を解釈し、自ASの内部で正しく解釈できる仕組みが備わっています。

 今日のインターネットで最も一般的に使用されているEGPは、BGPです。自律システムの大半で使用されており、推定で、約95%がBGPを使用されていると言われています。

AS間のルーティング

AS間でルーティングを行うためには、EGPを使用する必要があります。

 EGPは、異なる自律システムの間でルーティング情報を交換するための仕組みが備わっており、外部のルーティング情報を解釈し、自ASの内部で正しく解釈することができます。

それでは、EGPは、どこで動作するのでしょうか。

 EGPは、エクステリアルータ上で動作します。エクステリア ルータとは、ASの境界に位置するルータで、ボーダー ゲートウェイ、または、境界ルータとも呼ばれます。

 IGPのインテリアルータは、自AS内の経路情報を相互に交換してルーティングをAS内のルーティングを実現していますが、EGPのエクステリアルータは、外部のルーティング情報を解釈して、様々な経路情報を交換します。そして、EGPは、インターネット上のどのASを通過するのかを決定し、最善のパスを探し出します。

 各AS(自律システム)は、他のASに対して、自ASに到達するための経路情報などを通知する必要があります。そこで、AS、境界ルータ上で動作するEGPを通して、他のAS間で到達可能性情報を相互に交換します。

それでは、パケットがインターネット上の複数のASを経て、宛先に到達する流れを下図を使って説明していきます。

パケットは、複数の手順を経てインターネット上を誘導されます。

①発信元ホストが、別のAS上のリモートホスト宛にパケットを送信します。

②パケットの宛先は、自AS内には存在しないので、最終的に、自ASのエッジにある境界ルータに到達します。境界ルータは、接続しているASについて保存しているデータベースから、最適なものを選択し、隣接するネクストホップのASへパケットを誘導します。

③パケットは隣接するASの境界ルータに到着します。そこで、宛先が自AS内にあるかどうかを判断します。自AS内になければ、隣接するネクストホップのASへパケットを誘導することになりますが、自AS内に宛先があるので、ルーティングテーブル上にあるネクストホップのインテリアルータにパケットを誘導します。

※ここでは、図のサンプルネットワークが小さいため、すぐに宛先のASに到着していますが、実際には、②③の処理が繰り返されます。

④その後、パケットは、AS内のOSPFなどのAS内で設定されているIGPのルールに従って、自AS内部のネクストホップを誘導して、最終的に宛先ホストに到着します。