このページで解説している内容は、以下の YouTube 動画の解説で見ることができます。
STPの動作 その2
「STPの動作 その1」の続きです。STPの動作について確認していきます。
STPでは、以下の4段階のプロセスを経てループのないトポロジを完成させます。
- ルートブリッジの選出
- ルートポートの選出
- 指定ポートの選出
- 代替(ブロック)ポートの選出
ここでは、「3.指定ポートを選出」から「4.代替(ブロック)ポートの選出」までを解説します。
「STPの動作 その1」までで、ルートブリッジとルートポートは下図のように選出されています。

指定ポートの選出
ルートポートを選択した後、次に指定ポートを選択します。
指定ポートとは各セグメントでルートブリッジに最も近いポートです。言い換えると、ルートブリッジへのトラフィックを受信する最適なポートということになります。
指定ポートの選出ルールは以下のとおりです。
- ①各セグメントごとに1ポートが選択される。
- ②ルートブリッジ上のすべてのポートが指定ポートになる。
- ③セグメントの片側がルートポートである場合、反対側が指定ポートになる。
ルートブリッジ上のすべてのポートはパスコストが 0 になるため指定ポートになります。今回のネットワーク構成では③に該当する場所はありません。
②③のルールにより、下図のように指定ポートが選出されます。

残るのは、S1-S3間のセグメントの指定ポートの選出です。
ルートポートがない場合の指定ポートの選択
S1-S3間のセグメントには、ルートポートがありません。
②③のルールが適用できないため、「①各セグメントごとに1ポートが選択される」ルールを適用することになります。
それでは、どのようなルールで指定ポートを決定するのでしょうか?
1.ルートブリッジへのパスコストを比較
まず、ルートブリッジへのパスコストを比較します。
しかし、S1スイッチとS3スイッチのどちらも、ルートブリッジへのパスコストは同じです。
2.ブリッジIDを比較
ブリッジIDをタイブレーカとして使用します。

S1スイッチとS3スイッチのBIDを比較します。
プライオリティとVLAN IDは同じです。
BID = プライオリティ + VLAN ID + MACアドレス

そこで、S1スイッチとS2スイッチのMACアドレスを比較します。
S1のMACアドレス ・・・ 0060.2FE9.59A3
S3のMACアドレス ・・・ 000A.F3A5.D473
S3スイッチのMACアドレスの方が小さいということは、BIDもS3スイッチの方が小さいということになります。
したがって、S3のF0/1ポートが指定ポートとして選出されます。

代替(ブロック)ポートの選出
最後に、代替(ブロック)ポートを選出します。
ルートポート、指定ポートの役割がないポートが代替(ブロック)ポートに選出されます。
つまり、役割が与えられずに残ったS1のF0/2ポートが代替(ブロック)ポートに選出されることになります。
最終的には、下図のように各スイッチのポートに役割が与えられます。

S1のF0/2ポートのリンクライトがオレンジ色になっていることでも確認できます。
※エンドでパイス(PC)を接続しているポートは、すべて指定ポートになります。
これが、STPのループ防止のメカニズムです。
各スイッチのポートの役割の確認
各スイッチのポートの役割を確認するには、以下のコマンドを使用します。
Switch#show spanning-tree
S1の出力
S1#show spanning-tree
VLAN0001
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32769
Address 0001.437B.7450
Cost 19
Port 1(FastEthernet0/1)
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 0060.2FE9.59A3
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/1 Root FWD 19 128.1 P2p
Fa0/3 Desg FWD 19 128.3 P2p
Fa0/2 Altn BLK 19 128.2 P2p
・F0/1がルートポートで転送
・F0/3が指定ポートで転送
・F0/2が代替(ブロック)ポートでブロック
であることが確認できます。
S2の出力
S2#show spanning-tree
VLAN0001
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32769
Address 0001.437B.7450
This bridge is the root
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 0001.437B.7450
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/1 Desg FWD 19 128.1 P2p
Fa0/2 Desg FWD 19 128.2 P2p
Fa0/5 Desg FWD 19 128.5 P2p
Fa0/6 Desg FWD 19 128.6 P2p
Fa0/7 Desg FWD 19 128.7 P2p
S2上のポートは、すべて指定ポートで転送モードであることが確認できます。
※エンドでパイス(PC)を接続しているポートは、すべて指定ポートになります。
S3の出力
S3#show spanning-tree
VLAN0001
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32769
Address 0001.437B.7450
Cost 19
Port 2(FastEthernet0/2)
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 000A.F3A5.D473
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/1 Desg FWD 19 128.1 P2p
Fa0/2 Root FWD 19 128.2 P2p
Fa0/3 Desg FWD 19 128.3 P2p
・F0/1、F0/3が指定ポートで転送
・F0/2がルートポートで転送
であることが確認できます。
