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演習ファイルのダウンロード
ファイルは Packet tracer Version 8.2.1 で作成しています。古いバージョンの Packet Tracer では、ファイルを開くことができませんので、最新の Packet Tracer を準備してください。
ネットワークの構成を Packet Tracer で一から設定していくのは大変かと思います。「ダウンロード」から演習で使用するファイルのダウンロードができます。ファイルは、ウイルスバスターでウイルスチェックをしておりますが、ダウンロードは自己責任でお願いいたします。
STPの動作 その1
STPの動作について確認していきます。
STPでは、以下の4段階のプロセスを経てループのないトポロジを完成させます。
- ルートブリッジの選出
- ルートポートの選出
- 指定ポートの選出
- 代替(ブロック)ポートの選出
ここでは、「1.ルートブリッジの選出」から「2.ルートポートの選出」までを解説します。
ネットワークの構成は、下図を用います。

ルートブリッジの選出
Cisco Catalyst スイッチではPVST+がデフォルトで有効になっています。
PVST+(Per VALN Spanning Tree Plus)とは、VLAN単位でSTPを動作させるプロトコルで、VLANごとに異なるルートブリッジを設定することができます。
ルートブリッジは、最も小さいBIDを持つスイッチが、ルートブリッジに選出されます。

BID = プライオリティ + VLAN ID + MACアドレス
ということは、何も設定していない場合、
特に何も設定していない場合、スイッチのプライオリティは、「32768」になっています。
また、スイッチのすべてのポートは、VLAN1に所属しているため、拡張システムIDは「1」になります。
ということは、つまり、スイッチ本体のMACアドレスの値によって、BIDが決まることになります。
各スイッチのBIDの確認
それでは、各スイッチのBIDを確認していきます。
BIDを確認するには以下のコマンドを実行します。
Switch#show spanning-tree
●S1のBID
S1#show spanning-tree
VLAN0001
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32769
Address 0001.437B.7450
Cost 19
Port 1(FastEthernet0/1)
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 0060.2FE9.59A3
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/1 Root FWD 19 128.1 P2p
Fa0/2 Altn BLK 19 128.2 P2p
Fa0/3 Desg FWD 19 128.3 P2p
●S2のBID
S2#show spanning-tree
VLAN0001
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32769
Address 0001.437B.7450
This bridge is the root
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 0001.437B.7450
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/1 Desg FWD 19 128.1 P2p
Fa0/2 Desg FWD 19 128.2 P2p
Fa0/5 Desg FWD 19 128.5 P2p
Fa0/6 Desg FWD 19 128.6 P2p
Fa0/7 Desg FWD 19 128.7 P2p
●S3のBID
S3#show spanning-tree
VLAN0001
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32769
Address 0001.437B.7450
Cost 19
Port 2(FastEthernet0/2)
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32769 (priority 32768 sys-id-ext 1)
Address 000A.F3A5.D473
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 20
Interface Role Sts Cost Prio.Nbr Type
---------------- ---- --- --------- -------- --------------------------------
Fa0/2 Root FWD 19 128.2 P2p
Fa0/1 Desg FWD 19 128.1 P2p
Fa0/3 Desg FWD 19 128.3 P2p
黄色のマークを確認します。
各スイッチのプライオリティがデフォルトの「32768」であることが確認できます。
また、拡張システムIDですが、スイッチ上のすべてのポートがデフォルトでVLAN1に所属しているため、「1」であることが確認できます。
S1、S2、S3のプライオリティと拡張システムIDがすべて同じです。
ということは、MACアドレスが最も小さいスイッチがルートブリッジということになります。
水色のマーカーを確認します。
- S1スイッチのMACアドレス ・・・ 0060.2FE9.59A3
- S2スイッチのMACアドレス ・・・ 0001.437B.7450
- S3スイッチのMACアドレス ・・・ 000A.F3A5.D473
S2スイッチのMACアドレスが、最も小さいことが確認できます。
つまり、S2がルートブリッジとなります。

ルートポートの選出
ルードブリッジが選択されると、次にルートポートを選択します。このルートポートは、ルートブリッジ以外のすべてのスイッチで1つ選択されます。
ルートポートを選択するには、まず、ルートブリッジへのルートパスコストを求める必要があります。
ルートパスコストの計算
ポートコストは下表のように定義されています。
| リンク速度 | ショートパスコスト 802.1D規格 | ロングパスコスト 802.1W規格 |
| 10 Gbps | 2 | 2,000 |
| 1 Gbps | 4 | 20,000 |
| 100 Mbps | 19 | 200,000 |
| 10 Mbps | 100 | 2,000,000 |
シスコのスイッチは、デフォルトでIEEE 802.1D規格(ショートパスコスト)が使用されます。
※10Gbps以上のリンクを使用する場合は、IEEE 802.1W(ロングパスコスト)規格を使用することが推奨されています。
S1のルートポートの選出
S1のルートブリッジへのパスは下図のとおり2つあります。

ルートパスコストは、以下のようになります。
パス1 = 19
パス2 = 19 + 19 = 38
コストが最も低いパスが優先されるため、パス1の起点となるS1のF0/1ポートがルートポートとなります。
S3のルートポートの選出
S3のルートブリッジへのパスは下図のとおり2つあります。

ルートパスコストは、以下のようになります。
パス1 = 19
パス2 = 19 + 19 = 38
コストが最も低いパスが優先されるため、パス1の起点となるS3のF0/2ポートがルートポートとなります。
最終的にルートポートは下図のようになります。

「3.指定ポートを選出」「4.代替(ブロック)ポートの選出」については、次のコンテンツ「STPの動作 その2」で解説していきます。
