ブロードキャストストームの問題 その1

 通常、ループ検知機能が搭載されていないスイッチやハブでは、ブロードキャストメッセージを受信すると、受信したポート以外のすべてのポートに対して、ブロードキャストメッセージを送信します。

 例えば、下図のネットワーク構成では、PC-Aが送信したブロードキャストはS1スイッチが受信して、F0/2、F0/3、F0/4ポートに送信することになります。

 そして、S2スイッチでは、F0/3、F0/4ポートでブロードキャストメッセージを受信し、受信したポート以外のすべてのポートに対してブロードキャストメッセージを転送することになります。このブロードキャストメッセージは永遠にS1スイッチとS2スイッチ間で流れ続けることになります。

 このような問題をブロードキャストストーム(Broadcast Storm)といいます。ネットワーク内のデータ通信が過度に増加し、ネットワークのパフォーマンスが著しく低下する状況となります。これは通常、ループ状に構成されたスイッチやハブに接続されたデバイスが大量のブロードキャストメッセージを送信し、ネットワーク上のすべてのデバイスに向けてデータを送信しようとすると発生します。

下図はネットワーク上でブロードキャストストームが発生している状況を表しています。

ブロードキャストストームの特徴や問題点

ブロードキャストストームの特徴や問題点は、次の通りです。

トラフィックの増加

 ブロードキャストストームが発生すると、ネットワーク上に余分なトラフィックが大量に発生します。これにより、通常のデータ通信や正常なネットワークトラフィックが妨げられ、ネットワークの帯域幅が飽和状態になり、ユーザーアプリケーションのパフォーマンスが著しく低下します。

ループや冗長性の問題

 ブロードキャストストームは、ネットワーク内でループや冗長な接続が存在する場合によく発生します。ループが存在すると、ブロードキャストメッセージがネットワーク内を無限に転送され、問題がエスカレートします。

デバイスの過負荷

 ブロードキャストストームが続くと、ネットワークデバイス(スイッチ、ルータ、ハブなど)が過負荷となり、正常な動作を妨げることがあります。これにより、ネットワーク全体がダウンする可能性があります。

MACアドレステーブルの不整合

 スイッチは、MACアドレステーブルを使用して、どのデバイスがどのポートに接続されているかを追跡します。MACアドレステーブルは、デバイスのMACアドレスと対応するポート情報を格納します。

 MACアドレステーブルの不整合は、テーブル内の情報が実際のネットワークトポロジーと一致しない場合に発生します。これは、デバイスの移動やハードウェアの故障などの要因によって引き起こされることがあります。

 これら2つの問題は通常、互いに関連して発生することがあります。ブロードキャストストームが発生すると、ネットワーク内で大量のブロードキャストメッセージが送信され、それによってMACアドレステーブルの不整合が引き起こされることがあります。例えば、ブロードキャストメッセージがネットワーク内の異なるセグメントに送信され、スイッチがMACアドレステーブルを正しく更新できない可能性があります。

ブロードキャストストームを防ぐ対策

ブロードキャストストームを防ぐためには、以下の方法が取られます。

VLANの設定

 VLAN(Virtual Local Area Network)を使用して、ネットワークを論理的にセグメント化し、ブロードキャストの拡散を制限します。

スパニングツリープロトコル

 スパニングツリープロトコル(STP)を使用して、ネットワーク内のループを検出し、ブロードキャストストームを回避します。

ネットワーク設計の最適化

 ネットワークの物理的な設計を最適化し、不要な冗長性を排除することで、ブロードキャストストームの発生リスクを低減します。ブロードキャストストームは、ネットワークの安定性と性能に対する重大な脅威であるため、適切なネットワーク管理と設計が必要です。

 次の「ブロードキャストストームの問題 その2」では、パケットトレーサを使って、ブロードキャストストームを再現していきます。

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