マルチエリアOSPF(エリアの種類)
OSPFには、様々なエリアがあります。エリアを定義することによってLSAがフラッディングされる範囲を制限したり、他のエリアへ通知する経路情報を集約ルートやデフォルトルートを通知してルーティングテーブルのサイズを小さくすることができます。
OSPFのエリアは、大きく分けると2種類あります。「バックボーンエリア」と「非バックボーンエリア」です。バックボーンエリアは、OSPFネットワークの基本のエリアになります。
●バックボーンエリア(エリア0)
●非バックボーンエリア
- 標準エリア
- スタブエリア
- 完全スタブエリア(トータリースタブエリア)
- NSSA(Not So Stubby Area)
- トータリースタブNSSA
ここでは、各エリアの概要について解説していきます。
バックボーンエリア(エリア0)
すべてのエリアが接続されるOSPFの中枢のエリアです。各エリアは、必ずエリア0(バックボーンエリア)に接続しなければならないというルールがあります。バーチャルリンク(Virtual link)という仮想のリンクを介してバックボーンエリアに接続させることもできますが、基本的にバックボーンエリアに接続させることになっています。
標準エリア
すべてのLSAが通知されるエリアです。全てのLSAが通知されるので、受信するLSAの数が多くなります。また、ルーティングテーブルのサイズが大きくなります。
OSPFの設定では、デフォルトで標準エリアに設定されます。
スタブエリア
外部ネットワークがデフォルトルートとして通知されるエリアです。LSAタイプ4(ASBRへの経路)、LSAタイプ5(AS外部の経路)がブロックされます。スタブエリア内には、ASBRを配置できないという制限があります。
LSAタイプ4(ASBRへの経路)、LSAタイプ5(AS外部の経路)の代わりに、LSAタイプ3でデフォルトルートを通知します。こうすることで、ルーティングテーブルのサイズを小さくして、受信するLSAの数を減らすことができます。
完全スタブエリア(トータリースタブエリア)
完全スタブは、Cisco独自のものです。マルチベンダーでOSPFネットワークを構築する際には、注意が必要です。外部ネットワークと外部エリアの経路情報がデフォルトルートで通知されるエリアのことです。
タイプ3、タイプ4、タイプ5のLSAを通知しません。ただし、エリアからでるデフォルトルートを通知するLSAタイプ3は除きます。
NSSA(Not So Stubby Area)
外部ネットワークを接続できるようにしたスタブエリアのことです。
スタブエリア内には、ASBRを配置できないという制限があります。スタブエリアにASBRを配置できるようにしたのがNSSAです。
NSSA内に配置されたASBRはLSAタイプ5ではなく、LSAタイプ7を送信します。LSAタイプ7は、別のエリアには、流れません。
そこで、NSSA内のABRは、
LSAタイプ7(NSSA内から) → LSAタイプ5(OSPFドメイン内へ)
(変換)
タイプ7のLSAをタイプ5のLSAに変換してフラッディングします。
NSSAでは、自分のエリアの外部の経路情報の通知を行いますが、他の外部ネットワークの経路情報は、ブロックします。つまり、外部からのLSAタイプ5はブロックします。
外部ネットワークの経路情報をNSSA内に通知するには、NSSA内のABRにデフォルトルートを通知するように設定を行う必要があります。
「area [area-id] nssa default-information-originate」コマンドで自分のエリア内でない外部の経路情報をLSAタイプ7で通知できるようになります。
つまり、NSSA内のABRで「default-information-originate」コマンドを使うと外部宛のデフォルトルートがLSAタイプ7で通知されるようになります。
LSAタイプ5(OSPFドメインから) → LSAタイプ7(NSSA内へ)
(変換)
トータリースタブNSSA
NSSAよりもさらに経路情報を簡略化するのがトータリースタブNSSAです。外部エリアの経路情報と外部ネットワークの経路情報をデフォルトルートとしてまとめて通知します。NSSAとは違い、デフォルトルートを通知するように設定を行わなくても自動的にデフォルトルートを通知することができます。
次の「マルチエリアOSPF(バックボーンエリアとは)」では、図を使ってバックボーンエリアについて解説します。
