RSTP・Rapid PVST+
RSTP(Rapid Spanning Tree Protocol)は、STP(IEEE802.1D)の後継のプロトコルで、IEEE802.1wで規定されているプロトコルです。
ネットワークを構成する上で、冗長性を確保するために、ネットワークをループ状にする場合があります。しかし、このような構成では、ブロードキャストをはじめ、ありとあらゆる通信データが、構成されたネットワーク上を永遠に循環することになります。
レイヤ2ヘッダには、TTL(Time To Live)値は、ありません。そのために、永遠にループし続けることになります。その結果、スイッチのCPU負荷が上がってしまい、スイッチの処理能力が限界を超えてしまい、ダウンしてしまいます。
この循環を防ぐために、スパニングツリープロトコル(STP)があります。このスパニングツリープロトコルは、IEEE 802.1Dとして標準化されています。
しかし、STPでは、最大で50秒の通信断が発生してしまうという欠点があります。
スパニングツリーでは、下のように5つの状態を移行するので、最大で50秒(20秒+15秒+15秒)の通信断が発生します。
・Disabled(無効)
↓(ポートは管理上シャットダウンされています)
・Blocking
↓(最大経過時間20秒)
・Listening
↓(転送遅延15秒)
・Learning
↓(転送遅延15秒)
・Forwarding
ブロッキング → リスニング → ラーニング → フォワーディング
のように処理が行われるため、長い間、通信が遮断された状態が続きます。
この状況は、ミッションクリティカルな環境では、決して好ましいとは言えません。
そこで、STP (IEEE802.1D) の弱点を克服するべく開発されたのがRSTP(IEEE802.1w)です。このRSTPは、STPと下位互換性があり、混在環境でも動作します。
STPでは、トポロジーに変更があった場合、50秒かかったのに対し、RSTPでは、スパニングツリーの再計算は、わずか1秒程度となり、瞬時に切り替えることが可能になります。
STPとRSTPのポートステータスの対応は、下表のようになります。
STP ポートステータス | RSTP(Rapit PVST+) ポートステータス |
MAC アドレスの学習 | データ転送 |
Disabled | Discarding | しない | しない |
Blocking | しない | しない | |
Listening | しない | しない | |
Learning | Learning | する | しない |
Forwarding | Forwarding | する | する |
Rapid PVST+、RSTPでは,対向スイッチからのBPDUの受信によってDiscardingとLearning状態を省略することができます。この省略で、高速なトポロジー変更を実現します。
RSTPの設定
Catalystスイッチにおけるスパニングツリーの設定では、PVST+、Rapid PVST+、MSTP の3種類のモードを「spanning-tree mode」コマンドで切り替えて行います。
PVST+ |
デフォルトのスパニングツリーのモードになります。PVST+(Per VLAN Spanning Tree Plus)は、STPの拡張版で、シスコ独自のプロトコルです。VLANごとに異なるSTPのインスタンスを生成し、ロードバランシングを行うことができます。 Switch(config)#spanning-tree mode pvst |
Rapid PVST+ |
Rapid PVST+ は、RSTPをVLAN単位で動作させ、高速なコンバージェンスを実現します。 Switch(config)#spanning-tree mode rapid-pvst |
MSTP |
MSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)は、RSTPの拡張プロトコルで、高速なコンバージェンスを実現します。ロードバランシングは、MST(IEEE802.1s)を使用して、CPUの負荷を減少させます。 |