ルータの通常の起動プロセス

 Ciscoルータの起動の仕組みを理解しておけば、ルータの起動障害時に役に立ちます。滅多に起こることはありませんが、IOSが壊れてしまうこともあります。

 IOSを復旧する時やパスワードをリカバリーする時に、復旧するには、起動プロセスをどこで変更すればいいのかが理解できまし、ルータのトラブル時にどこで問題が発生しているのか、原因を追究するのに役立ちます。

ルータを設定しているとついつい誤ってIOSを消してしまうケースもあります。

それでは、下の図を見ながらルータの通常の起動プロセスを確認していきます。

 ルータの電源を入れると、通常はルータのコンフィグレーションレジスタの値を0x2102で運用していると思われるので、以下のプロセスで起動することになります。

①POST
   ↓

②Bootstrap
   ↓
③コンフィグレーションレジスタの値の読み込み
   ↓
④IOSの読み込み
   ↓
⑤running-configの読み込み

起動プロセスの説明

それでは、各プロセスで何が行われるのかを、もう少し具体的に説明していきます。

①POST

 ルータの電源を入れるとPOSTが実行され、ハードウェアのチェックが行われます。異常がある場合は、ここで動作が中断されます。

②Bootstrap

 BootstrapがROMからRAMに呼び出されて実行されます。Bootstrapは、IOSの検索や読み込みに必要なプログラムです。

③コンフィグレーションレジスタの値の読み込み

コンフィグレーションレジスタの値を読み込み、ブートフィールドからIOSの読み込み先を判断する。

④IOSの読み込み

通常、ルータのコンフィグレーションレジスタには、0x2102が設定されているので、FlashからIOSを読み込み、RAMに展開する。

⑤running-configの読み込み

 IOSが起動すると、NVRAMに保存されている「startup-config」をRAMに展開します。展開して内容は、「running-config」に反映されます。「startup-config」がない場合は、Setupモードに移行します。

また、ルータの起動には、コンフィグレーションレジスタの値が、大きく関わってきます。

コンフィグレーションレジスタ

 コンフィグレーションレジスタは、NVRAMに保存されるルータの起動に関わる大事な値です。値は、16進数で表現し、値の先頭に「0x」を付けます。

通常、この値は、0x2102を使用します。パスワードリカバリーを行う際には、「0x2142」に変更してリカバリーを行います。

ルータに通常設定する「0x2102」を2進数に直すと、下の図のようになります。

●ビット番号とブロック

13ビット目: 1 ・・・ ネットワークブートに失敗したら、ROMのMini OSで起動する。
8ビット目: 1 ・・・ ルータの稼働中にBreakキーが使用できないようにする。
1ビット目: 1 ・・・ Flash内のIOSで起動する。

になっています。

第4ブロックのことを、ブートフィールドと呼んでいます。ルータのIOSの読み込みに関する重要な部分です。

●ビット番号と役目

ビット番号役目
15診断メッセージを表示する。NVRAMに保存している情報を使用しない。
14指定したIPサブネットにブロードキャストを送信する。
13ネットワークブートに失敗したら、ROMのMini OSで起動する。
12コンソール接続の際のスピードに使用。
11コンソール接続の際のスピードに使用。
100.0.0.0を使ってブロードキャストを送信する。
9未使用
8ルータの稼働中にBreakキーが使用できないようにする。
7OEM用。Cisco Systems社のバナーを表示しない。
6NVRAMに保存している情報を使用しない。
5コンソール接続の際のスピードに使用。
4未使用
3~0ブートフィールド。

●ブートフィールドの動作

動作
2~FFlash内のIOSをロードして起動する。
1ROM内のMini OSを使用して起動する。ただし、Mini OSを持っていない機種では、Flash内にある最初のIOSイメージで起動する。
0ROMモニタで起動する。

 コンフィグレーションレジスタの値は、ルータの起動や制御に関して重要な意味を持つ値です。実機の場合、この値を変更する際には、十分確認をした上で変更するようにしてください。

 実は、Packet Tracer でも、コンフィグレーションレジスタの値を変更することができます。シミュレーターでこの値を変更することは、ほとんどないかと思います。ルータのパスワードリカバリーを行う局面は、少ないかと思います。パスワードを忘れた場合は、新しいルータといくらでも交換ができるからです。ここまで、Packet Tracer が作りこまれているなんて、凄いですね。