RIP Version1
ルーティングプロトコルのアルゴリズムには、大きく分けて2種類のアルゴリズムがあります。1つは、小規模ネットワーク向けのディスタンスベクターで、もう1つは、中大規模向けのリンクステートです。
RIPは、歴史あるルーティングプロトコルでディスタンスベクターに分類されます。特徴としては、30秒に1回の割合で、隣接ルータに自分の持っているルーティンテーブルのコピーを交換します。
メトリックには、宛先ネットワークまでに経由するルータの数が使用され、最も経由するルータの数が少ないルートを採用します。RIPの最大ポップス数は、15に制限され、16は到達不能になります。
ディスタンスベクタールーティングプロトコルの特徴として、バケツリレーでルーティング情報を交換することから、ネットワークの構成が変化した場合に各ルータがコンバージェンスするまで時間がかかってしまうことが挙げられます。
そのため、ルーティングループが発生しやすい特徴があります。このループを防ぐためにスプリットホライズン(Split Horizon)などのアルゴリズムが採用されています。
RIPの紹介は、これぐらいにしておいて、早速、RIPでネットワークを構築してみましょう。
まずは、RIPを設定するためのコマンドを把握しておきましょう!
●スタティックルートを設定するコマンド
ADD IP RIP INTERFACE=vlan-if [IP=ipadd] [SEND={NONE|RIP1|RIP2|COMPATIBLE}] [RECEIVE={NONE|RIP1|RIP2|BOTH}] [DEMAND={YES|NO}] [AUTHENTICATION={NONE|PASSWORD|MD5}] [PASSWORD=password]
vlan-if: VLANインターフェース(VLAN-nameかVLANvidの形式。nameはVLAN名、vidはVLAN ID)
ipadd: IPアドレス
password: パスワード(1~16文字)
SEND: 送信するRIPパケットのフォーマット。NONEは送信しない。RIP1はバージョン1形式、RIP2はバージョン2形式で送信する。 COMPATIBLEはバージョン2形式で送信するが、RIP1互換の経路エントリー(クラスフルなネットワークアドレス)しか送信しない。デフォルトは RIP1。
RECEIVE: 受信するRIPパケットのフォーマット。NONEは受信しない。RIP1はバージョン1形式のみ受信。RIP2はバージョン2形式のみ受信。BOTHは バージョン1、2ともに受信するが、ナチュラルサブネットマスク(クラス標準マスク)を使用したネットワークアドレスしか受信できない。デフォルトは BOTH。
DEMAND: トリガーアップデートを使用するかどうか。デフォルトはNO。
AUTHENTICATION: RIP Version2使用時の認証方式。PASSWORDは平文テキストのパスワード、MD5は鍵付きMD5によるメッセージダイジェスト、NONEは認証を行わない。デフォルトはNONE。
上のコマンドを見てRIPを設定するコマンドが、長いように思われるかもしれませんが、RIPv1を設定するだけであれば、そんなにコマンドは、長くなりません。オプションを省略した場合は、デフォルト値が使われるからです。AUTHENTICATIONは、RIP Version2使用時の認証方式の指定です。
それでは、コマンドを把握したところで、「スタティックルーティング」で使った下図のネットワークをRIPで構築してみましょう。

RIPの設定方法
RIPのパケットを送受信するインタフェースを指定します。
例えば、SW1では以下の設定を行います。
add ip rip int=vlan-default
add ip rip int=vlan20
●インターネットへのルートについて
インターネットへの経路としてデフォルトルートを指定します。デフォルトルートの指定は、宛先ネットワークの指定を「0.0.0.0」で指定します。
ADD IP ROUTE=0.0.0.0 INT=vlan-default NEXTHOP=192.168.1.254
●ブロードバンドルータの設定について
インターネットの接続点となるルータは、ブロードバンドルータで代用します。RIPの歴史は古く伝統的なルーティングプロトコルです。ブロードバンドルータでもRIPをサポートしている場合が多いので、お持ちのブロードバンドルータがRIPをサポートしているか確認してみて下さい。ここでは、ブロードバンドルータにRIPの設定をしてみます。
下の図は、ブロードバンドルータに、RIPを設定した例です。

●SW1のコンフィグ
create vlan=vlan10 vid=10
create vlan=vlan20 vid=20
add vlan=vlan10 port=1-8
add vlan=vlan20 port=22,24
enable ip
add ip int=vlan-default ip=192.168.1.253 mask=255.255.255.0
add ip int=vlan10 ip=192.168.10.254 mask=255.255.255.0
add ip int=vlan20 ip=192.168.20.254 mask=255.255.255.0
add ip rip int=vlan-default
add ip rip int=vlan20
add ip route=0.0.0.0 int=vlan-default nexthop=192.168.1.254
●SW2のコンフィグ
create vlan=vlan20 vid=20
create vlan=vlan30 vid=30
add vlan=vlan20 port=1,3
add vlan=vlan30 port=17-24
enable ip
add ip int=vlan20 ip=192.168.20.253 mask=255.255.255.0
add ip int=vlan30 ip=192.168.30.254 mask=255.255.255.0
add ip rip int=vlan20
add ip route=0.0.0.0 int=vlan20 nexthop=192.168.20.254
設定ができたところで、RIPで経路情報がやり取りされているかどうか、ルーティングテーブルを表示して確認してみましょう!
●スイッチ1の「show ip route」のログ
Manager > show ip route
IP Routes
-------------------------------------------------------------------------------
Destination Mask NextHop Interface Age
DLCI/Circ. Type Policy Protocol Metrics Preference
-------------------------------------------------------------------------------
0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.254 vlan1 159
- direct 0 static 1 360
192.168.1.0 255.255.255.0 0.0.0.0 vlan1 163
- direct 0 interface 1 0
192.168.10.0 255.255.255.0 0.0.0.0 vlan10# 162
- direct 0 interface 1 0
192.168.20.0 255.255.255.0 0.0.0.0 vlan20 161
- direct 0 interface 1 0
192.168.30.0 255.255.255.0 192.168.20.253 vlan20 160
- remote 0 rip 2 100
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RIPで経路情報がやり取りされているのがわかると思います。