MSX tuebo R

MSX tuebo R

 MSX turbo R(エム・エス・エックス・ターボアール)は、MSX規格の一部であり、MSX2+の後継として1990年に発表されました。正式な表記は「MSX turbo R」であり、「MSX TurboR」のようにスペースを開けたり、「T」を大文字で表記するのは誤りです。

 MSX turbo Rは、従来のMSXシリーズと比較していくつかの進化を遂げています。まず、MSX2+まで採用されていたZ80A相当の8ビットCPUに加えて、16ビットCPUの「R800」が採用されました。また、MSX2+までオプションだったMSX-DOS2、MSX-JE、MSX-MUSICが標準で搭載されています。

 MSX turbo Rは松下電器産業(現・パナソニック)によって製造され、1990年10月に「FS-A1ST」として発売されました。初期の販売数は予想を上回るほど好調であり、その後の「FS-A1GT」の発売も行われました。しかし、価格の面で競合するPC-9801シリーズの互換機に対抗できず、販売台数は減少しました。

 MSX turbo Rは、MSX-ENGINE2と呼ばれるZ80互換品と、R800使用時のZ80バスサイクルエミュレーション機能を搭載したシステムLSI S1990を搭載しています。R800は高速なZ80互換のCPUであり、MSX turbo RではZ80の拡張として使用されています。ただし、MSX turbo RではZ80とR800を同時に使用することはできず、排他的に切り替えて使用します。

 MSX turbo RのR800のクロック周波数は28.636360MHzであり、実際の動作クロックは1/4の7.15909MHzです。R800はZ80と比較して命令実行速度が約4倍速いため、「Z80換算で28MHz相当」と表記されることもあります。

 MSX turbo Rは、メモリー・マッパーと呼ばれる機能を使用してメインメモリを拡張しますが、内蔵のメモリーマッパーには制限があります。512KiBまでは正常に実装できますが、1MiBに増設した場合には問題が生じることがあります。

 また、MSX turbo RはV9958を採用しており、表示処理に関してはMSX2+よりも遅くなる傾向があります。VDPへのアクセスにウェイトがかかり、表示処理の増加によってパフォーマンスが制限される場合があります。しかし、垂直同期割り込み期間中に処理を行うことで、高度な処理を実現するプログラムも登場しました。

 音源としては、MSX-MUSICが標準で搭載され、8ビットPCMの録音再生機能も備えています。ただし、PCM再生時には他の処理を一時停止するため、音楽の同期演奏には制約があります。

MSX turbo Rは、MSX規格の最後のバージョンとなります。以下に、MSXturboRの特徴と機能の詳細を示します。

  1. R800プロセッサ:
     MSX turbo Rは、従来のMSXシリーズに比べて高性能なプロセッサであるR800を搭載しています。R800は、Z80と互換性がありながらも、高速な処理能力を持っています。命令実行速度がZ80に比べて約4倍速いため、高速な処理が可能です。
  2. 拡張機能の標準搭載
     MSX turbo Rは、MSX2+までオプションだった機能を標準で搭載しています。これには、MSX-DOS2(高機能なディスクオペレーティングシステム)、MSX-JE(日本語環境拡張)、MSX-MUSIC(高品質な音源チップ)が含まれます。これにより、より多機能で高性能なシステムが提供されました。
  3. メモリー拡張
     MSX turbo Rは、メモリーマッパーと呼ばれる機能を使用してメインメモリを拡張します。ただし、内蔵のメモリーマッパーには制限があり、512KiBまでは問題なく実装できますが、1MiB以上に増設する場合には互換性の問題が生じる可能性があります。
  4. 高速なグラフィックス
     MSX turbo Rは、MSX2+と同じくV9958を搭載していますが、VDPへのアクセス速度が向上しています。これにより、高速なグラフィックス処理が可能であり、一部のソフトウェアではより高度な描画や処理が行われました。
  5. PCM音源
     MSX turbo Rは、8ビットPCMの録音再生機能を備えています。これにより、よりリアルな音声表現が可能となりました。しかし、PCM再生時にはCPUの他の処理が一時停止されるため、音楽の同期演奏には制約がありました。

 MSX turbo Rは、MSXシリーズの最終バージョンであり、高性能なプロセッサと標準搭載の拡張機能により、より進化したパフォーマンスと機能を提供しました。