タグVLAN

タグVLAN

 タグVLANは、IEEE 802.1Q規格に基づくVLANの一種であり、ネットワークフレームにVLANタグを付加して識別する方式です。タグVLANを使用することで、複数のVLANを1つの物理リンク上でトランスポートすることができます。

以下に、タグVLANの特徴と機能を詳しく解説します。

  1. VLANタグ
     タグVLANでは、ネットワークフレームにVLANタグが追加されます。VLANタグは12ビットの値で、フレームのヘッダに追加されます。タグには、VLANの識別子(VLAN ID)が含まれており、フレームがどのVLANに所属しているかを示します。
  2. トランクポート
     タグVLANを使用するには、スイッチのポートをトランクポートとして設定する必要があります。トランクポートは、複数のVLANのトラフィックを扱うことができるポートです。トランクポート上のフレームは、VLANタグを付けて送信され、受信側のスイッチやルータはタグを解釈してフレームを適切なVLANに振り分けます。
  3. タグの付加と削除
     トランクポートでは、送信されるフレームにVLANタグが付加されます。送信元スイッチは、各フレームに適切なVLANタグを付けてトランクポートに送信します。受信側スイッチやルータは、タグ付きのフレームを受け取り、タグを解釈してフレームを適切なVLANに割り当てます。また、タグのないフレーム(アクセスポートからの送信など)は、トランクポートを介して転送される際に自動的にタグが付加されます。
  4. ネイティブVLAN
     タグVLANでは、トランクポート上の特定のVLANをネイティブVLANとして設定することができます。ネイティブVLANは、タグのないフレーム(VLANタグがないフレーム)が送信されるVLANを指定します。ネイティブVLANは、通常、アクセスポートと接続されているデバイスが所属するVLANとして設定されます。
  5. 複数のVLANのトラフィック
     タグVLANを使用することで、1つの物理リンク上で複数のVLANのトラフィックをトランスポートできます。これにより、ネットワークの効率性と柔軟性が向上し、ネットワークセグメンテーションが容易になります。
  6. VLANの範囲
     IEEE 802.1Qでは、VLAN IDの範囲が1から4094までと定義されています。ただし、一部のスイッチやネットワークデバイスでは、特定のVLAN ID(たとえば、ID 1やID 4095)が制約される場合があります。また、VLAN ID 1はデフォルトでネイティブVLANとして予約されていることが一般的です。
  7. タグVLANの利点
     タグVLANの利点はいくつかあります。まず、1つの物理リンク上で複数のVLANをサポートできるため、ネットワークの効率性が向上します。さらに、異なるVLAN間のトラフィックを物理的に分離することができるため、ネットワークセキュリティの向上に貢献します。また、VLANの追加や変更が容易であり、柔軟性に富んだネットワーク設計が可能です。
  8. タグVLANの制限事項
     タグVLANを実装するためには、ネットワークデバイスやスイッチがIEEE 802.1Q規格をサポートしている必要があります。また、タグVLANを使用する場合、フレームのサイズが増加するため、ネットワーク上での帯域幅の使用量に注意する必要があります。

 タグVLANは、大規模なネットワーク環境やセキュリティ要件の高い環境などで広く利用されています。複数のVLANを1つの物理リンクでトランスポートすることで、ネットワークのセグメンテーション、トラフィックの制御、セキュリティの強化などのメリットを享受することができます。