物理層で動作する機器

物理層で動作する機器

 物理層は、ネットワークで使用される機器や媒体が物理的な接続を行う層であり、信号の電気的な特性に関する規格や物理的な接続方法が定義されています。物理層で動作する機器は、以下のようなものがあります。

  1. ネットワークケーブル
     ネットワークケーブルは、物理層において情報伝送の媒体として使用されます。代表的なネットワークケーブルには、UTPケーブル、STPケーブル、光ファイバーケーブルなどがあります。これらのケーブルは、信号伝送のための物理的な接続を提供します。
  2. リピータ
     リピータは、物理層において信号の再生と増幅を行うことで、通信距離を延長するための役割を持ちます。リピータは、信号を受信して再送信することで、信号の強度を増幅し、通信の際に生じるノイズを減少させることができます。
  3. ハブ
     ハブは、物理層において、複数のノードを接続し、情報の受信と転送を行うための役割を持ちます。ハブは、受信した信号を全てのポートに転送するため、ネットワーク上に流れるデータが増え、ネットワークの帯域幅が低下することがあります。
  4. コンセントレータ
     コンセントレータは、物理層において複数のノードを接続し、情報の集約と分配を行うための役割を持ちます。ハブと同様に、受信した信号を全てのポートに転送するため、ネットワーク上に流れるデータが増え、ネットワークの帯域幅が低下することがあります。
  5. ネットワークインタフェースカード(NIC)
     ネットワークインタフェースカードは、物理層において、コンピューターなどのデバイスをネットワークに接続するための役割を持ちます。NICは、デバイスとネットワークケーブルを接続することで、情報の送受信を行います。
  6. トランシーバ
     トランシーバは、物理層においてデジタル信号をアナログ信号に変換する役割を持ちます。デジタル信号は、1と0のビット列で表されますが、ネットワークケーブルを通じて送信する際にはアナログ信号に変換する必要があります。トランシーバは、デジタル信号をアナログ信号に変換し、ネットワークケーブルに流すための回路を備えています。

 これらの物理層の機器は、情報の伝送や接続を実現するために必要不可欠な役割を担っています。また、ネットワークインフラの改善に伴い、より高速で信頼性の高い機器が開発され、物理層の技術も進化しています。

ネットワークケーブル

物理層で動作するネットワークケーブルは、データを伝送するための物理的な媒体です。主に使われるのは以下の3種類です。

  1. ツイストペアケーブル ツイストペアケーブルは、2本の導体を撚り合わせたもので、カテゴリー5(Cat5)ケーブルが代表的です。一般的に、LANケーブルとして使用され、10Mbpsや100Mbpsのイーサネット通信に使用されます。ツイストペアケーブルは、接続された機器間で信号を送受信するための4対の導体を含みます。また、一般的に直径が約0.5mmの単心銅線を使用します。
  2. 光ファイバーケーブル 光ファイバーケーブルは、光信号を伝送するためのケーブルで、主に長距離通信に使用されます。一般的に、2本の光ファイバーを包むように、外側を保護するジャケットがあります。光ファイバーケーブルは、電気信号ではなく、光信号を伝送するため、電磁ノイズの影響を受けにくく、高速で大量のデータを伝送できます。
  3. 同軸ケーブル 同軸ケーブルは、中心に導体があり、その周りに絶縁体、さらにその周りにメタルシールドという層があります。外側にはプラスチックなどの被覆材があります。同軸ケーブルは、一般的にテレビのアンテナ接続や、ケーブルテレビに使用されます。

以下に、物理層で動作するネットワークケーブルに関する情報を表にまとめます。

種類概要使用例
ツイストペアケーブル2本の導体を撚り合わせたもので、LANケーブルとして使用される10Mbpsや100Mbpsのイーサネット通信
光ファイバーケーブル光信号を伝送するためのケーブルで、長距離通信に使用される電磁ノイズの影響を受けにくく、高速で大量のデータを伝送する場合
同軸ケーブル中心に導体があり、その周りに絶縁体、さらにその周りにメタルシールドという層があるテレビのアンテナ接続や、ケーブルテレビに使用される
物理層で動作するネットワークケーブル

 これらのネットワークケーブルは、ネットワークの規模や環境に合わせて選択する必要があります。また、物理層の機器と共に、ネットワークの性能や信頼性を高めるために適切なメンテナンスが必要です。

NIC(Network Interface Card)

 NIC(Network Interface Card)は、物理層で動作するネットワークアダプターのことです。コンピューターの本体に挿入され、ネットワークケーブルを接続することで、コンピューターとネットワークを接続する役割を担います。

NICには以下のような特徴があります。

  • イーサネット規格に準拠している
     多くの場合、NICはイーサネット規格に準拠しています。これにより、コンピューターがイーサネットネットワークに接続されることができます。
  • 速度の異なる接続に対応している
    NICは、10Mbps、100Mbps、1000Mbps(1Gbps)などの速度の異なる接続に対応しています。
  • オンボードと拡張カードの2種類がある
     コンピューターに搭載されているものをオンボードNIC、コンピューターに後付けで取り付けるものを拡張NICと呼びます。
  • ハードウェアとソフトウェアで構成される
     NICは、ハードウェアとドライバーソフトウェアで構成されます。ハードウェアは、ネットワークデータの送受信を担当し、ドライバーソフトウェアは、ハードウェアの動作を制御するためのプログラムです。

 また、最近では無線LAN規格に準拠したNICも一般的になってきています。これらのNICは、物理的にはケーブルでの接続が不要で、Wi-Fiを利用してネットワークに接続することができます。

リピーター

 リピーターは、物理層で動作するネットワーク機器の一種で、電気信号を増幅・再生することで、ネットワークを延長する役割を担います。リピーターは、ケーブルで接続されたネットワーク機器同士を、より長い距離で接続することができます。

リピーターには以下のような特徴があります。

  • 電気信号の再生・増幅により、距離を延長する
     リピーターは、ケーブルに伝送される電気信号を再生し、増幅することで、信号の劣化を防ぎ、距離を延長することができます。
  • 信号の形状を整える
     リピーターは、ケーブルを介して伝送される電気信号を整形することで、信号のクオリティを向上させることができます。
  • 複数のポートを持つ
     一般的に、リピーターには複数のポートが備わっており、これらのポートを使って複数のネットワーク機器を接続することができます。
  • ブロードキャストによるネットワークの拡散
    リピーターは、受信したパケットを全てのポートにブロードキャストするため、ネットワークの拡散が行われます。

 ただし、リピーターは単純な機器であるため、ネットワークの性能に大きな影響を与えることがあります。また、リピーターは信号をただ増幅するだけであるため、信号のノイズも一緒に増幅してしまうことがあります。そのため、現代のネットワークでは、リピーターを使用することはほとんどありません。代わりに、ハブやスイッチなどの機器が使われることが一般的です。

リピーターハブ

 物理層で動作するリピーターハブは、ネットワークにおいて信号が弱まった場合に信号を増幅する装置です。リピーターは信号を単に再送するだけですが、リピーターハブは多数のポートを持ち、接続されたデバイス同士が通信できるようにします。

 リピーターハブは、単純な機器であり、ネットワークの速度が遅くなるという欠点があります。リピーターハブは、1つのポートに到着した信号をすべてのポートに転送するため、ネットワークトラフィックが増えると、ハブ全体の帯域幅が共有され、パフォーマンスが低下します。そのため、現代のネットワークでは、リピーターハブはあまり使用されなくなっています。代わりに、スイッチングハブが使用されます。

メディアコンバーター

 物理層で動作するメディアコンバーターは、異なるメディアタイプ間でデータを伝送するための装置です。例えば、光ファイバーと銅線ケーブルを接続する場合、メディアコンバーターが必要となります。

 メディアコンバーターは、光信号を電気信号に変換し、または電気信号を光信号に変換することができます。このように、メディアコンバーターは、異なるメディアタイプを持つデバイスを接続するためのシームレスなソリューションを提供します。

 メディアコンバーターは、一般に外部電源を必要としないため、ポータブルで設置が容易で、フレキシブルなネットワーク設計が可能です。ただし、メディアコンバーターを使用する場合、データの伝送速度や信頼性に影響を与えることがあるため、適切に選択する必要があります。

物理層で動作するアクセスポイント(変調・復調という意味で)

 アクセスポイント(AP)は、物理層で動作するデバイスの一つで、無線LANの接続を制御するために使用されます。APは、変調・復調を担当する機能を持っています。

 APは、周波数帯を指定して無線信号を発信し、クライアントデバイスと通信するための接続ポイントを提供します。APは、無線信号を受信し、デジタルデータに変換し、そのデータを有線ネットワークに送信するための変調機能を備えています。また、APは、有線ネットワークからのデータを無線信号に変換するための復調機能も持っています。

 APは、SSID(Service Set Identifier)を発信し、周波数帯を指定することによって、無線LANに接続することができます。SSIDは、無線LANのネットワーク名を示し、クライアントデバイスがネットワークにアクセスするために必要な情報です。

 APは、無線LANに接続するためのキーを生成し、暗号化された通信を行うためのセキュリティ機能を提供することもできます。これにより、無線LANのセキュリティを強化することができます。

 APは、一般的に、企業や公共施設などの大規模なネットワークで使用されています。無線LANのカバレッジ範囲を広げることができ、モバイルデバイスを使用する従業員や訪問者などが、ネットワークにアクセスできるようにすることができます。