衝突耐性(ハッシュ関数)

衝突耐性(ハッシュ関数)

 衝突耐性とは、ハッシュ関数が異なる入力に対して異なる出力を返す性質を持つことを指します。つまり、同じハッシュ値が異なる入力で生成されることがないようにすることが目的です。

 ハッシュ関数は、任意の長さのデータを固定長のデータに変換する関数であり、様々な用途に利用されます。例えば、パスワードの保存やデータの検索に利用されることがあります。ハッシュ関数が衝突耐性を持っていない場合、攻撃者は正当な入力とは異なる入力を意図的に選択することで、同じハッシュ値を生成することができます。これを悪用して、偽の認証情報を生成したり、データを改ざんする攻撃が行われる可能性があります。

 衝突耐性の評価には、誕生日攻撃と呼ばれる手法が用いられます。誕生日攻撃とは、ハッシュ関数が生成するハッシュ値の範囲内において、ランダムに選択した異なる入力が同じハッシュ値を生成する確率を求める攻撃です。ハッシュ関数の衝突耐性は、この確率が小さいほど高いと言えます。

 代表的な衝突耐性のあるハッシュ関数としては、SHA-256、SHA-3、BLAKE2などがあります。これらのハッシュ関数は、実用的な衝突攻撃がまだ見つかっていないため、安全に利用することができます。

 衝突耐性があるハッシュ関数に対しても、ブレイズダウン攻撃と呼ばれる方法で衝突を見つけることができる可能性があります。この攻撃では、ハッシュ関数の内部構造を利用して、少ない計算量で衝突を見つけます。そのため、現在使用されている多くのハッシュ関数に対して、ブレイズダウン攻撃の可能性が指摘されています。

 一方、SHA-3と呼ばれるハッシュ関数は、ブレイズダウン攻撃に対しても耐性があることが証明されています。SHA-3は、NISTによって標準化されたハッシュ関数であり、現在広く使用されています。

 また、最近では、量子コンピュータが現実的な範囲で開発されることが予想されています。量子コンピュータは、従来のコンピュータとは異なる方式で計算を行うため、現在使用されている暗号技術やハッシュ関数に対して破壊的な影響を与える可能性があります。そのため、今後の情報セキュリティにおいて、量子コンピュータに対する耐性を持つ暗号技術やハッシュ関数の研究開発が進められています。