一方向ハッシュ関数

一方向ハッシュ関数

 一方向ハッシュ関数(One-way Hash Function)とは、任意のデータを入力として受け取り、固定長のハッシュ値(ダイジェスト値)を出力する関数のことです。ハッシュ値は、元のデータから導き出される一意の値であり、異なる入力に対して異なるハッシュ値が生成されます。

 一方向ハッシュ関数は、安全なデータの保存や認証のために広く使用されています。例えば、パスワードの保存には、パスワードをハッシュ関数でハッシュ値に変換して保存することが一般的です。ユーザーがログインする際に、入力されたパスワードを同じハッシュ関数にかけ、保存されているハッシュ値と比較して認証を行います。これにより、パスワードを保存する際には、ハッシュ値のみを保存しておくことができ、元のパスワードを知ることができないため、セキュリティが向上します。

一方向ハッシュ関数には、以下のような特徴があります。

  • 同じ入力に対しては常に同じハッシュ値を返します。
  • 異なる入力に対しては、異なるハッシュ値を返します。
  • ハッシュ値から元の入力を復元することはできません。
  • 入力がわずかにでも異なる場合、全く異なるハッシュ値が生成されます。
  • 大量の入力に対して、同じハッシュ値が生成される可能性があります(衝突)。

 一方向ハッシュ関数には、MD5やSHA-1などの古いアルゴリズムから、SHA-256やSHA-3などのより新しいアルゴリズムまで多数の種類が存在します。現在では、セキュリティ要件が高いシステムではSHA-3などの強力なアルゴリズムが使用されることが一般的です。

一方向ハッシュ関数の安全性は、主に以下の要因によって決まります。

  1. 衝突耐性(Collision Resistance)
     異なる入力に対して、同じハッシュ値が生成される確率が非常に低いことを意味します。衝突耐性が低いハッシュ関数は、攻撃者が別の入力を見つけ、同じハッシュ値を生成することができるため、セキュリティが脆弱になります。
  2. 逆引き困難性(Pre-image Resistance)
     ハッシュ値から元の入力を復元することが困難であることを意味します。逆引き困難性が低いハッシュ関数は、攻撃者が元の入力を推測することができ、安全性が脆弱になります。
  3. 二次衝突耐性(Second Pre-image Resistance)
     ある入力に対して生成されたハッシュ値が既に知られている場合、別の入力を見つけて同じハッシュ値を生成することが困難であることを意味します。二次衝突耐性が低いハッシュ関数は、攻撃者が同じハッシュ値を持つ入力を見つけることができ、セキュリティが脆弱になります。

 一方向ハッシュ関数は、暗号学的に強力である必要があります。これは、攻撃者がハッシュ値から元の入力を復元することができないようにするためです。しかし、一方向ハッシュ関数は、ハッシュ値から元の入力を完全に復元することはできません。これは、ハッシュ値が固定長の値であるため、異なる入力に対して同じハッシュ値が生成される可能性があるためです。しかし、ハッシュ値が異なる入力に対して一意であることが重要であり、このような攻撃を防止するために、一方向ハッシュ関数の設計には慎重に取り組まれます。