フェールソフト

フェールソフト

 「フェールソフト」とは、ソフトウェアの設計思想の一つであり、ソフトウェアが不具合や異常状態に陥った場合でも、その影響を最小限に抑えるように設計されたものを指します。つまり、ソフトウェアが予期せぬ状況に陥った場合にも、何らかの対処を行い、システムの安定性を維持することができるようになっています。

フェールソフトは、以下のような特徴を持ちます。

  1. 障害回復能力の強化
    ソフトウェアに障害が発生した場合でも、自己回復や再起動によって、システムを正常な状態に戻すことができます。
  2. エラー処理の強化
     ソフトウェアにエラーが発生した場合でも、そのエラーがどこで発生したのかを特定し、正常な状態に戻す処理を行うことができます。
  3. 再構成の可能性
     ソフトウェアが不具合によって破損した場合でも、必要なデータや構成情報を保持していれば、その状態からシステムを再構成することができます。
  4. ログ記録の強化
    ソフトウェアの動作状況や異常状態などを、ログとして記録することで、問題の原因を特定することができます。
  5. 安全性の強化
     ソフトウェアの動作が人の命や安全に影響する場合には、特に安全性を重視し、フェールセーフの思想を取り入れた設計を行うことが求められます。

 フェールソフトは、特に航空宇宙や鉄道、医療機器など、高い安全性が求められる分野でのソフトウェア設計に適用されています。また、近年は自動運転車やロボットなど、人の安全に関わる分野でも、フェールソフトの思想が導入されることが期待されています。

さらに、フェールソフトには以下のような具体的な技術手法が存在します。

  1. リカバリブロック
     予期せぬエラーが発生した場合、そのエラーを起こした部分のみを再起動することで、システム全体の再起動を防ぐ手法です。
  2. 冗長化
     システムの一部を複製しておくことで、障害発生時にもシステム全体の機能を維持する手法です。冗長化の手法には、ハードウェア冗長化とソフトウェア冗長化の2種類があります。
  3. 障害診断機能
     エラーが発生した際に、その原因を特定するための機能です。システムの内部状態を監視し、異常を検出した際には、その原因を特定するための情報を収集します。
  4. 時間制限付きプロセス
    プロセスが長時間動作し続けることを防ぐため、時間制限を設けて一定時間経過すると強制的に終了させる手法です。
  5. デッドマンスイッチ
     一定時間内に正常な動作が行われなかった場合、自動的にシステムを停止させる手法です。デッドマンスイッチは、システムが長時間動作し続ける場合や、リアルタイム性が要求される場合に有効です。

 以上のような手法を用いて、フェールソフトの思想を実現することができます。しかし、完全なフェールソフトは存在せず、常に改善が必要な設計思想であることに留意する必要があります。