スロースタート

スロースタート

 フロー制御は、ネットワーク通信において、送信側と受信側の間のデータ転送速度を制御する技術です。フロー制御には、輻輳制御とウィンドウ制御の2つの方法があります。ウィンドウ制御には、スロースタートと転送ウィンドウの拡大があります。

 スロースタートは、TCP通信において、送信側がネットワークに負荷をかけ過ぎないように、最初のデータ転送時に送信するパケット数を少なくし、徐々に増やしていく方式です。送信側は、まず1つのパケットを送信し、その後、正常に受信されたACKに応じてパケット数を2倍に増やしていきます。この操作を繰り返すことにより、送信側は送信可能なデータ量を徐々に増やしていきます。

 スロースタートは、ネットワークの輻輳を回避するために非常に有効な手段です。しかし、通信回線が高速化した現代のネットワークでは、通常の状況であれば短時間で大量のパケットを送信できるため、スロースタートは必要ない場合があります。そのため、TCPには、通信回線の状況に応じてスロースタートの有効化・無効化を自動的に切り替える機能が備わっています。

 スロースタートの反対にあたる機能として、転送ウィンドウの拡大があります。転送ウィンドウの拡大は、送信側が通信回線の状況に応じて送信するパケット数を自動的に増やす機能です。転送ウィンドウの拡大は、スロースタートと同様に、ネットワークの輻輳を回避するために有効な手段です。しかし、転送ウィンドウの拡大は、通信回線の帯域幅を最大限に活用するために必要な機能であり、スロースタートとは異なる目的で使用されます。

 転送ウィンドウの拡大は、送信側が通信回線の状況に応じて、送信するパケット数を動的に調整するために使用されます。通信回線の帯域幅が広い場合、送信側は多くのパケットを同時に送信することができます。そのため、転送ウィンドウの拡大は、通信回線の帯域幅を最大限に活用し、通信速度を向上させるために非常に重要な機能です。

 転送ウィンドウの拡大には、通信回線の帯域幅と遅延時間の両方が重要な要素となります。通信回線の帯域幅が広い場合、送信側は多くのパケットを同時に送信できますが、通信回線の遅延時間が長い場合、パケットの到着時間が遅れるため、パケットロスが発生する可能性があります。そのため、転送ウィンドウの拡大においては、通信回線の帯域幅と遅延時間のバランスを取りながら、最適なパケット数を送信する必要があります。

 また、転送ウィンドウの拡大には、パケットロスを検知して送信速度を自動的に調整する機能が備わっています。パケットロスが発生すると、送信側はACKの受信を待たずに次のパケットを送信することができますが、この場合、パケットロスが再発生する可能性があるため、送信速度を抑制する必要があります。そのため、転送ウィンドウの拡大では、パケットロスを検知して、送信速度を自動的に調整する機能が備わっています。

 転送ウィンドウの拡大は、ネットワークの性能を最大限に引き出すために非常に重要な機能です。TCP通信では、転送ウィンドウの拡大によって、通信速度を向上させることができます。しかし、通信回線の状況に応じて、スロースタートや転送ウィンドウの拡大など、さまざまな技術を組み合わせて、通信速度を最適化する必要があります。