NATトラバーサル

NATトラバーサル

 NATトラバーサル(NAT traversal)は、プライベートIPアドレスを使用するデバイスが、インターネット上の別のデバイスと通信するために使用される技術です。通常、NAT(Network Address Translation)は、インターネット接続を共有するために使用されますが、これにより、ネットワーク内のデバイスは、インターネット上の他のデバイスに対して直接アクセスできなくなります。NATトラバーサル技術は、この問題を解決するために開発されました。

NATトラバーサルは、通常、以下のような技術を使用して実現されます。

  1. STUN(Session Traversal Utilities for NAT):STUNは、UDP通信のNAT越えに使用される技術です。STUNクライアントは、NATを介して外部のSTUNサーバーに接続し、自身の公開IPアドレスを取得します。その後、STUNクライアントは、取得した公開IPアドレスとポート番号を使用して、NATを越えてUDP通信を行います。
  2. TURN(Traversal Using Relays around NAT):TURNは、UDP通信のNAT越えに使用される技術です。TURNサーバーは、NATを越えた通信を行うために、UDPパケットをリレーする役割を担います。TURNクライアントは、NATを介してTURNサーバーに接続し、TURNサーバーを介してUDP通信を行います。
  3. ICE(Interactive Connectivity Establishment):ICEは、UDP通信のNAT越えに使用される技術です。ICEは、STUNとTURNを組み合わせて、NAT越えの通信を確立します。ICEクライアントは、まずSTUNを使用してNATを介して直接通信できるかどうかを確認し、通信ができない場合にはTURNを使用して通信を確立します。

 NATトラバーサルは、特定のアプリケーションで必要な場合があります。たとえば、ビデオチャットやオンラインゲームなどのリアルタイムコミュニケーションアプリケーションでは、デバイス間の通信遅延を最小限に抑えるために、NATトラバーサル技術が必要です。しかし、NATトラバーサルを使用する場合には、ネットワーク構成やファイアウォールの制限などにより、通信が正常に行われない場合があるため、注意が必要です。