ARP

ARP

 ARP(Address Resolution Protocol)は、IPアドレスを物理アドレス(MACアドレス)にマッピングするために使用されるプロトコルです。通常、ネットワーク上のデバイスは、IPアドレスとMACアドレスを持っています。ARPは、ネットワーク上のデバイスが通信する前に、IPアドレスをMACアドレスに解決するために使用されます。

 ARPは、ARP要求とARP応答の2つのメッセージタイプを使用して動作します。ARP要求は、ネットワーク上のすべてのデバイスにブロードキャストされ、指定されたIPアドレスを持つデバイスのMACアドレスを尋ねます。その後、対象のデバイスがARP応答を送信し、自分のMACアドレスを返します。ARP応答は、ARP要求を送信したデバイスに直接送信されます。

 ARPは、ネットワーク上の通信を最適化するために重要です。ARPキャッシュと呼ばれるキャッシュを使用して、ARP応答をキャッシュし、同じ宛先IPアドレスに対する将来の通信で再利用します。これにより、ARP要求のブロードキャストが減少し、通信の効率が向上します。

ARPの仕組み

ARPは、通常、次の手順で動作します。

  1. 送信元ホストが、宛先IPアドレスを持つデータフレームを送信します。
  2. 送信元ホストが、自分のARPキャッシュテーブルを検索して、宛先IPアドレスの対応するMACアドレスが既にキャッシュされているかどうかを確認します。キャッシュにあれば、そのMACアドレスを使用して直接宛先にデータフレームを送信できます。
  3. 宛先IPアドレスに対応するMACアドレスがARPキャッシュにない場合、ARP要求パケットをブロードキャストして、宛先IPアドレスに対応するMACアドレスを尋ねます。
  4. ネットワーク上のすべてのノードは、ARP要求パケットを受信します。この中から、宛先IPアドレスにマッチするノードだけが、ARP応答パケットをブロードキャストします。ARP応答には、宛先IPアドレスに対応するMACアドレスが含まれています。
  5. 送信元ホストが、受信したARP応答パケットから宛先MACアドレスを取得し、ARPキャッシュに保存します。そして、宛先MACアドレスを使用して、直接宛先にデータフレームを送信します。

 ARPキャッシュには有効期限があり、定期的にARP応答を送信することで更新されます。ARP攻撃と呼ばれる攻撃手法も存在し、ARPキャッシュを操作して通信を妨害することができます。

ARPパケットフォーマット

 ARP(Address Resolution Protocol)パケットは、ネットワーク上のデバイスのIPアドレスとMACアドレスを関連付けるために使用されます。以下は、一般的なARPパケットのフォーマットです。

各フィールドには、以下のような情報が含まれます。

  • ハードウェアタイプ:ネットワークに使用されるハードウェアのタイプを示します。例えば、イーサネットの場合は1が使用されます。
  • プロトコルタイプ:IPアドレスなどのプロトコルの種類を示します。例えば、IPv4の場合は0x0800が使用されます。
  • ハードウェアアドレス長:ハードウェアアドレスの長さをバイト単位で示します。例えば、イーサネットの場合は6が使用されます。
  • プロトコルアドレス長:プロトコルアドレスの長さをバイト単位で示します。IPv4の場合は4が使用されます。
  • オペレーションコード:ARPパケットの種類を示します。ARPリクエストの場合は1、ARPリプライの場合は2が使用されます。
  • 送信元ハードウェアアドレス:ARPパケットを送信するデバイスのハードウェアアドレスを示します。
  • 送信元プロトコルアドレス:ARPパケットを送信するデバイスのプロトコルアドレスを示します。
  • 宛先ハードウェアアドレス:ARPパケットの宛先デバイスのハードウェアアドレスを示します。ARPリクエストの場合は0が使用されます。
  • 宛先プロトコルアドレス:ARPパケットの宛先デバイスのプロトコルアドレスを示します。

ARP要求

 ARP要求は、ネットワーク上のあるデバイスが、別のデバイスの物理アドレスを知りたい場合に使用されます。デバイスは、ネットワーク上の全てのデバイスにARP要求を送信し、物理アドレスを持っているデバイスは自分の物理アドレスを含むARP応答を返します。ARP要求は、ブロードキャストアドレス(FF-FF-FF-FF-FF-FF)に送信されるため、全てのデバイスが要求を受信します。ただし、ARP応答は、要求を送信したデバイスだけが受信します。

 ARPキャッシュと呼ばれるローカルなデータベースにより、デバイスは以前に解決されたIPアドレスと物理アドレスのペアを保存できます。ARPキャッシュに保存された情報を利用することで、ARP要求の必要性を減らし、ネットワークトラフィックを削減することができます。

ARP応答

 ARP(Address Resolution Protocol)応答は、ARP要求に対する返答として送信されるメッセージです。

 ARP応答は、ARP要求を受信したデバイスが自身の物理アドレスを含めて返信します。ARP応答は、送信元IPアドレス、送信元物理アドレス、宛先IPアドレス、宛先物理アドレスの4つのフィールドから構成されています。

 ARP応答は、ARPキャッシュに保存されます。ARPキャッシュには、IPアドレスと物理アドレスのペアが格納され、同じIPアドレスへの通信が必要になった場合に、ARP応答を送信することなく、ARPキャッシュから物理アドレスを取得することができます。ARPキャッシュは一定期間経過後、自動的に削除されます。

 ARP応答は、MACアドレスを解決するための重要な手段であり、ネットワーク通信の効率性を高めることができます。ただし、ARP応答が不正な場合、ARPスプーフィング攻撃などの悪意のある攻撃に利用されることがあります。